みんなで作る映画データベース
  1. トップ
  2. 映画一覧
  3. ドラマ
  4. 生き方・哲学・宗教
  5. タクシードライバー
  6. dreamerのコメント

タクシードライバー/dreamerのコメント

rating44.0000

タクシードライバーへのコメント

採点

rating5

推薦数

+1

コメント

ニューヨークという、得体の知れない魔性の怪物と、そこに住む孤独で鬱屈した、内向的な人間の狂気との関係を、ドキュメンタリー的手法で描いた「タクシードライバー」

ネタバレ

このレビューは物語の核心部分が明かされています。

レビュー

「タクシードライバー」は、1976年度カンヌ国際映画祭でグランプリ受賞のアメリカ映画の問題作であり秀作です。 

監督は、当時「アリスの恋」の繊細で鋭い映像感覚で注目されたマーティン・スコセッシ。
脚本は「ザ・ヤクザ」、「ローリング・サンダー」等の異色作で知られるポール・シュレーダー。
音楽は数々のヒッチコック映画で有名なバーナード・ハーマン。

優れたいい映画は、オープニング・シーンから痺れるような、映画的陶酔の世界へ我々観る者をのめりこませてくれます。
黒いバックを背景に赤い文字で、"TAXI DRIVER"というタイトルが浮かび上がります。

けだるくアンニュイなバーナード・ハーマンのテーマ曲が流れて来て、画面上にはグレーがかった白い蒸気が一面に立ちこめていて、その向こう側の闇の奥の中から、不気味な黄色いタクシーが現われて来ます。 
正しく息を飲むような、戦慄の素晴らしいオープニング・シーンです。

真夜中の毒々しいネオンのイルミネーションの洪水に溢れる喧噪の大都会ニューヨーク。
その喧噪の中を走らす、ヴェトナム戦争帰りの元海兵隊員で、不眠症のタクシードライバーのロバート・デ・ニーロ扮するトラヴィス・ビックル。

マンハッタンを走るタクシーの運転席からのショット。
ワイパーをかけてもかけても、強烈な雨のシャワーがフロント・ガラスを濡らし、極彩色のネオンがにじみ、舗道の薄暗い光の中で、人々が霞んで浮かび上がって来ます。
マーティン・スコセッシ監督の映像魔術に翻弄されてしまいます。

このシーンに続けてトラヴィスの独り言、「獣どもは夜になると外に出て来る。
娼婦とポン引き、チンピラ、ヤクの売人と中毒患者、金が目当ての汚い奴らめ。
いつの日にか、本物の雨がこいつら人間のクズどもを街から洗い流してくれるんだ」と狂気の人間像を暗示していきます。

この汚れきって堕落している街の中で毎晩、車という密室を一人走らせているタクシードライバーの日常を描いたリアリズムと、ニューヨークという街へのファンタジーの境界線に立ち、ニユーヨークという得体の知れない魔性の怪物と、そこに住む孤独で鬱屈した内向的な人間の狂気との関係を、ドキュメンタリー的手法で丹念に描いていきます。

トラヴィスは、日記を書いていますが、彼の視界に飛び込んでくるものは全てゴミですが、監督のマーティン・スコセッシや我々観る者の眼から見ると、トラヴィスもまた、ゴミにしか見えないという二重構造になっています。

そして、トラヴィスの神経は、次第にこの街の腐臭に毒され病んでいきます。
売春と暴力が蔓延するこの大都会は、トラヴィスのような内向的な人間の心を孤独でさいなんでいきます。

「俺の人生にはいつも淋しさがつきまとう。バーにいても車の中でも舗道でも店でもどこでもだ。逃げる場所はない」という精神状況になり、この孤独感はついに強迫観念となり、過激な暴力にまで彼を追い込んでいきます。

それはあたかも、ニューヨークという魔性の怪物にひとり敢然と立ち向かう孤独なドン・キホーテを想起させます。

大統領選挙の美人の選挙運動員のシビル・シェパード扮するベッツィとの、強引とも思えるデートとその無残な失敗は、トラヴィスの異常で狂気の精神状況の始まりで、偽善的な大統領候補に対する暗殺未遂は、彼にとって最後の残された生き甲斐のはけ口のようなものでした。

様々な種類の銃だけが、彼に生きる力、勇気を与え、現代のドン・キホーテは、銃をもって大都会の汚れきった諸悪に対し敢然と挑んでいきます。

そして、問題のラストシーンですが、ジョディ・フォスター扮する13歳の娼婦の救出に、命を賭ける最後の銃撃のシーンは、凄惨な描写で息を飲む凄まじさですが、この行動は、異常で狂気の錯乱としか言いようがありません。

このシーンは、精神に異常をきたした、トラヴィスの膨れ上がった「幻覚の世界」を描いています。

このように解釈しないと、ラストのシーンが余りにも英雄主義的で甘すぎます。
何故ならば、ニューヨークという魔性の怪物の大都会に打ちのめされた、孤独なタクシードライバーが、ヒーローとなって都会の諸悪を現実に打破するだけの力を持ち得るとは到底思えないからです。

評者

dreamer

更新日時

2021年03月06日 13時16分

コメントの推薦

参考になる この映画については、『ジョーカー』との絡みで、もう一昨年になりますが、私も見直してこのサイトの『ジョーカー』の評でいろいろ書きました。よかったら、のぞいてみてください。 2021-03-06
hacker2
2021年11月28日 11時05
2021年11月28日 11時05
©ずばぴたテック