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ビッグ・フィッシュ/dreamerのコメント

rating44.1200

ビッグ・フィッシュへのコメント

採点

rating5

推薦数

+1

コメント

信じる心だけが生み出す"奇跡"を描いた、ティム・バートン監督のまばゆい色彩と、ほのぼのとした温かさに満ち溢れた「ビッグ・フィッシュ」

ネタバレ

このレビューは物語の核心部分が明かされています。

レビュー

息子ウィル(ビリー・クラダップ)とジョセフィーン(マリオン・コティヤール)の結婚式で挨拶をするエドワード(アルバート・フィニー)の話は、「息子が産まれた日に釣った巨大魚」の物語。

いくらチャレンジしても釣ることが出来なかった"ビッグ・フィッシュ"。
それを金の指輪をエサにして釣ることが出来た、要するに、結婚も----というオチがついたスピーチなのだ。

拍手喝采を浴びる父の陰で、息子のウィルはうんざり顔。耳にタコが出来るほど聞かされている話を、また聞かされ、一生に一度の晴れ舞台の主役まで持っていかれるとは------。

しかし、このエドワードの話は面白く、実際、彼は誰からも愛される男なのだ。
この冒頭のエピソードを見ただけで、これは"父と子の物語"なのだということがよくわかる。

一人前の男になろうとしている男にとって、父親というのは、大きな壁。
程度の差こそあれ、誰しもが父親という大きすぎる存在に対する、嫉妬を経験するものだと思う。
この冒頭のシーンは、そんな男の"感情のツボ"をよく押さえていると思う。

ウィルも子どもの頃は、エドワードが聞かせてくれる"荒唐無稽なホラ話"に夢中になっていたのだ。
しかし、成長し、大人になった今、いつまでたっても"真実"を語ってくれない父親に不信感を拭えないでいる。

そんなウィルが父親エドワードの危篤を聞き、病床で真の父親を知る、最後のチャンスに賭ける、というのがこのドラマの本筋なのだと思う。

こうして、エドワードの口から飛び出すのは、依然として変わらぬ"夢物語"の数々であった。

ティム・バートン監督がこの映画を撮ることにしたのは、自分自身の父親の死が契機であったと言われています。

また、撮影中には自らも父親になるという体験をしている。
この映画に比類なき"優しさ"をもたらしたのは、紛れもなく、これらの経験であろうと思う。

事実、淋しさと漆黒に彩られた、過去のバートン作品とは比べものにならないほど、この作品は、まばゆい色彩とほのぼのとした温かさに満ち溢れている。

若き日のエドワード(ユアン・マクレガー)が遭遇する、死期を眼球に映す魔女、身長5メートルの大男、謎めいたサーカス一座の団長、妖しく艶やかなシャム双生児といった、"異形のキャラクターたち"に注がれる偏愛は、いつものバートン作品と共通するものだ。

ただ、彼らの造形は何となく予定調和的な感じがする。
しかし、そもそもエドワードが語る"珠玉の物語"の数々は、誰もが昔どこかで聞いたことがある、童話のような世界観で、だからこそ、我々観ている者は、ひたすら心地良く身を委ねることが出来るのだ。

とにかく、バートン監督が紡ぎ出すイメージの一つ一つがしっくりとハマルのだ。

そして、とりわけ印象的なのは、"死という概念"に対するイメージを、我々の憧憬とピタリと一致させているところだと思う。

それゆえに、ラストは心から幸せな涙を流す事が出来、ああ、こういう人生っていいな、と思えるのだ。

この世の天国を思わせるスペクターの町、一万本の水仙の花を贈ったプロポーズ。
この美しく洗練された映像の全てが、ティム・バートン監督の"優しさの象徴"なのだと心から思う。

誰もが小さい頃から、父親はリスペクト出来る存在であって欲しいと願っている。
それでも、父親だって欠点や弱さを持った普通の男であるということに気付く日がやって来る。

そんな父親を一人の人間として受け入れ、今度は負けたくない、という葛藤にぶつかり、それを乗り越えることで、初めて男は一人前に成長するものだと思う。

男が人間としての成長の過程において苦悩する、こうした感情をおおらかに優しく見つめるこの作品は、とても包容力のある映画に仕上がっていると思う。

ジャーナリストであるウィルは、"事実"を求めすぎるあまり、"事実"よりもっと奥深い"真実"を見失っていたのだ。
しかし、彼がエドワードを一人の人間として受け入れた時、初めて"真実"が見えてくる------。

信じる心だけが生み出す"奇跡"。
これぞまさしく、本当の意味での"ファンタジー"なのだと思う。

評者

dreamer

更新日時

2021年08月28日 09時48分

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