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笑の大学/葉直のコメント

rating33.6154

笑の大学へのコメント

採点

rating4

推薦数

+2

コメント

(★4+)
椿一(つばきはじめ=劇団・笑いの大学座付作家=稲垣吾郎)が
スクリーンを横切っていきます。
背広はチェック柄。まずここでクスリと笑う。肩の辺り、柄合せがズレているのです。
それらしく一応の体裁を整えてはいるけれど、しがない劇作家なのだと一目で判る。
もちろん計算の上でしょう、この先に期待してしまいます。[スクリーン×1]

ネタバレ

このレビューは物語の核心部分が明かされています。

レビュー

最初から横道ですが、椿が検閲官(=役所広司)に使う敬語(日本語)は、
過不足のない美しいものだと思います。
言葉は生き物ですから何ら決め付けはできませんし、
偉そうなことを言えたものでもないのですが、
久し振りに心地良い思いをしました。

思えばここにある笑いも心地良いのです。
優しくてどこか温かく、昭和の忘れ形身のような笑い。
古くて馬鹿馬鹿しいれど、そこに居る観客を丸く包んでしまうような笑い。
浅草の劇場で観客達がいっせいに笑っている場面は、まさにそうです。
ここでのエキストラを選ぶ条件は、昭和の顔をしていることだったそうで、
そう言えば日本人も大分顔が変わってきていますよね。
その浅草の観客よろしく笑いを共有するささやかな喜びが、
この映画の評価を高めているような気がしますし、
おそらく三谷幸喜の狙いどころの1つでもあるのでしょう。
彼に傾倒しているわけではありませんが、貴重な劇作家だと思います。

巧みなストーリー構成、それを支える適度な音楽、
アナログにこだわったゆえの美術など、
どれも丁寧な仕事ですが、それもそのはず。
劇作家が劇作家を書き(脚本し)、役者は演じることを演じ、
登場人物は、図らずもですが、協力して1つのストーリーを完成させる。
この物語は、役者やスタッフである彼ら自身の物語でもあるのですよね。
作る苦しみも喜びも知っている彼らの熱意が、
映画好き、舞台好きの人々の心に届かないはずはありません。と、思います。

とりわけ印象的なのは、箱(部屋)。
徹底してシンプルながら広がりを感じさせる空間。
そこにシンメトリーな配置の家具と窓。
その窓は縦に長く、光の加減ひとつでイメージを変える手伝いをする。
それらがこの密室から、見る側を自由にしてくれています。
息苦しさと単調さから開放する為には、原作舞台には無い、
浅草の劇場・取調べ室の廊下・警官や戯作者、を創ったそうですが、
エピソードとしては楽しく、太平洋戦争を時代としては
しみじみとした背景を与えることになったと思います。

モデルとなった喜劇王エノケンの座付作家・菊谷栄は、実際に召集され35才で戦死。
三谷が、信頼する星護監督の意見にも譲らず、ラストシーンを実話のままにと望んだことは
私には当然且つ正しかったと思えます。同じ劇作家としての気持ちもあったでしょうが、
哀しみと対比させた笑いは人の胸をより打つような気がします。

ある雑誌のこの映画のインタヴュー記事で稲垣吾郎が着ていた背広が、
偶然なのかチェック柄。黒っぽい生地に同色のラインが交差したシックな
ものですが、こちらはもちろん柄合せがピッタリしていました。

長いレヴューを読んで頂きましてありがとうございました。

評者

葉直

更新日時

2004年12月21日 08時46分

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