(今のところ★4+)
1つの無邪気な過ちが招いた“一生の荷”。お父さんがピエロを続けるのは、
演じても演じても返せはしない大恩への感謝と償い。その痛みを分かち
続ける親友。見守り続ける妻。そして、初めて知る14才の息子。
ジャン・ベッケル監督と2度コンビを組んだ故セバスチャン・ジャブリゾ
(脚本家・小説家)の「笑いは最高の武器だ」という言葉に捧げられました。
どんなに過酷な状況の中であっても、楽しみやユーモアが散りばめられています。
[スクリーン×1]
このレビューは物語の核心部分が明かされています。
だからこそ浮き彫りになる無念…敵国の兵(そもそものピエロ)が争うことの
無意味さを示した行動の結末。しかし大義の前ではなんと小さな事でしょう。
だからこそ浮き彫りになる孤独…死を前に罪の身代りを決意した夫の妻が
「本当の犯人を知っていて黙っていた」こと。なんと苦しい善意でしょう。
毎週日曜のピエロ。きっとお父さんは、命ある限り演じ続けるはず…。
さて実は、この作品を観ながら、同監督前作の『クリクリのいた夏』(‘99)が
頭の中をチラつき、あまり集中できませんでした。私にとって、それほど
印象的な映画だったのだと新ためて気付かされました。戦争の傷を“匂わせ”
つつ、穏やかな戦後(第一次世界大戦後)へのノスタルジーを描いた「クリクリ〜」。
「ピエロ〜」は、まさに戦時下(第二次世界大戦、ナチ占領下)での出来事が元と
なり、戦後へも流れ込みます。ストーリーは全く別物ですが、ごく普通の市民の
生き様を優しく見つめ、活き活きと描き、所々に同じエッセンスが匂っています。
又、主要キャストがダブっていますし、撮影・編集・美術・衣装は同じスタッフが
担当しています。
もし、どちらかの映画を気に入ったなら、ぜひもう片方も御覧下さいね。
メモ( ..)φ※人質が投げ込まれた巨大な“穴”に、監督の父ジャック・ベッケルの
往年の名作『穴』へのオマージュを忍ばせている&製作は息子であるルイ・ベッケル
が担当。
※世界15カ国で出版された、ミシェル・カンの同名ベストセラー小説が原作。
『ピエロの赤い鼻』に感銘を受けたスピルバーグがハリウッド版リメイク権を獲得。
2004年12月01日 02時53分
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