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狼の王子/hacker2のコメント

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狼の王子へのコメント

採点

rating5

コメント

プログラム・ピクチャー作家として知られた舛田利雄のおそらく最高傑作!

レビュー

名のみ知っていましたが、観たのは初めてでした。舛田利雄の作品としては、私は『紅の流れ星』(1967年)『無頼より・大幹部』(1698年)がすぐ思い浮かびますが、本作はそれらを凌駕する傑作です。

主人公は武二(高橋英樹)通称タケ、戦後の北九州の闇市でたくましく生きていた戦争孤児の集団のリーダーでした。彼は日下組の組長日下万蔵(石山健二郎)に気に入られ、後継ぎとして迎え入れられます。石炭景気に支えられ活況を呈していた若松港を牛耳っていた日下組でしたが、武二が高校生の時、眼前で万蔵がライバル加納組の刺客によって殺されます。前日、組員同士の喧嘩騒ぎに参加して足を負傷し、万蔵から「小さい喧嘩をするもんじゃない」と叱られていた武二は、それを阻止することができなかったのです。

裁判を傍聴していた武二は、隠し持った拳銃で、加納組の組長と実行犯を射殺し、その場で自首します。これは昭和30年のことでした。

3年の刑期を終えて出所した武二は、留守を預かっていた文五郎(加藤嘉)に出迎えられますが、今では加納組の方が羽振りの良い状況を説明され、東京の八千代会に身を寄せることになります。

おりしも60年安保の時代、左翼系学生への襲撃を繰り返していた八千代会に同行した武二は、学生運動に肩入れしていた新聞記者葉子(浅丘ルリ子)と出会います。

安保運動終了後、挫折感から生き方を見失った葉子と、八千代会の世話になって無為の日々を送っていた武二は再会し、恋におちます。

同じ頃、同じ戦争孤児仲間だった銀二(川地民夫)、通称ギンとも再会します。彼は関西を牛耳る組の幹部となっていて、一緒に働くことをもちかけますが、武二は断ります。「お前は狼から犬になったのか」と罵られますが、翻意することはしません。

しかし、昭和39年の東京オリンピックを迎え、ヤクザの世界も関西と関東に二大勢力に統一され、更にお互いに手を握り合う中、葉子の存在にもかかわらず、武二が狼に戻る時は近づいていたのでした。


本作は、社会党浅沼委員長の刺殺などニュースでの実写を交え、戦後の混乱から高度成長時代に移っていく様を語りながら、一匹「狼」の群れが「犬」の集団へと変わっていく時代を象徴的に描いたものです。葉子が武二に言う「小さくても日々楽しいことがあれば良いんじゃない」という主旨の発言は、男女の発想の差というよりも、この時代の変化を映したものです。

それと、この時代に、手持ちカメラを多用した自由なカメラワーク、それだけでなく、しっかりしたパン・フォーカスを利用した奥行のある構造など、ヌーヴェル・ヴァーグの時代を反映した基本的な映画作りへの姿勢が素晴らしいです。

もう一つ、この映画は浅丘ルリ子が素晴らしい!当時23歳で、どちらかと言うと、男性俳優の添え物的な印象が強かったと思いますが、本作では潜在的な狼である男性に恋してしまった女性の姿を演じ、後年の大女優の片鱗を見せてくれます。

この映画は、彼女を映す数カットで終るのですが、それが深い余韻を残すのは、映画の中でのそれまでの彼女の存在感の大きさを示しているのです。

繰り返しになりますが、傑作です。

評者

hacker2

更新日時

2019年02月17日 07時55分

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2021年11月28日 07時53
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