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レッド・ムーン/hackerのコメント

rating44.5000

レッド・ムーンへのコメント

採点

rating4

コメント

公開当時、ベトナム戦争の影響を受けた西部劇と言われたものです。

レビュー

監督のロバート・マリガンの最も知られた作品となると『アラバマ物語』(1962年)でしょうが、他にも本作や『ニッケル・ライド』(1974年)など、いくつかの佳作を残しています。制作のアラン・J・パクラは監督としても、ウォーターゲート事件を扱った『大統領の陰謀』(1976年)、ホロコーストを扱った『ソフィーの選択』(1982年)など、いわゆる社会派として知られた存在です。この二人が組んだ本作は、現在の視点でも、と言うか、現在となってみるとよけいに奥行きを感じる西部劇となっています。

映画は、居住地から脱出したアパッチの先住民の群れ(しかもメキシコから越境してきた!)を、騎兵隊が捕らえる場面から始まります。ところが、群れの中に、先住民との間にできた息子を連れた白人女性サラ(エヴァ・マリー・セイント)が混ざっていました。彼女の家族は皆殺しにされ、それ以来先住民の中で生きてきたのでした。

騎兵隊のスカウトをしていたサム(グレゴリー・ペック)は、この仕事を最後に、以前から所有していた牧場に引退する予定だったのですが、サラから「ここにいると危険だから」という理由で駅馬車の停車場まで連れて行ってほしいと頼まれ、最初は方向が違うという理由で断ったのですが、彼女の頼りなさげな風情にほだされて、結局引き受けます。

ところが、停車場で彼女の息子が逃げだし、それを追いかけて外へ出たサムとサラが戻って来てみると、停車場の人間は皆殺しにされていました。実は、彼女の息子の父親はサルバヘ(スペイン語で「野蛮」の意味)という白人にとっては、悪名高い戦士だったのです。

サムは、駅馬車の護衛で鉄道の駅まで付き添って行き、結局彼女と息子を自分の牧場まで連れて行くことにします。汽車の長旅で行くような場所までサルバヘは来ないと思ったのですが、サルバヘは殺人を重ねながら、息子を取り返すべく、追跡してくるのでした。

本作の特徴は、何といっても、敵役であるサルバヘがほとんど姿を見せないという点です。後半のサムとの直接対決の場となるサムの住居周辺での戦いで、初めて姿を見せますが、それもちらちらと見えるだけで、全身を現すのは、本当に最後の最後です。公開当時、この敵の描写は、ベトナム戦争の戦場のアメリカ兵の恐怖が反映されているのではないかと言われたものです。この恐怖は、ジョン・カーペンターの傑作『要塞警察』(1976年)で、より具体的に語られることになりますが、本作は気配も足音もなく近寄ってくる敵というジャンルの始まりの作品ではないかと思います。ですので、この映画は、前半の、戦いは見せないで、サルバヘの残した死体だけ見せている場面の緊迫感の盛り上げ方が、映画としては最も優れたものだと思います。

もう一つ、この作品の特徴は、サラの息子が最後までサムにはなつかないという点です。実は、サムには混血の若者ニックを教え込んで一人前のスカウトにしたという実績があるのですが、そのニックに「この子は自分の部族にもどる」と言われてしまいます。つまり、白人同士のサムとサラとの関係と違い、先住民と白人との間には、安易な結末は用意されていません。もちろん、そういう人種関係が主題の作品ではありませんが、これもハリウッド全盛期のハッピーエンド時代の終わりを告げる気運の表れだったのでしょう。

また、サラの置かれた状況は、戦いのあるところで、いつも女性が苦しんできた状況でもあるわけで、サラの次の台詞は、本作で最も印象的なものです。

「私は死ぬ勇気がなかった。生き残るために何をしないといけないかは分かっていた」
‘I didn't have the courage to die. I knew what I had to do to stay alive.’

傑作とは言えませんが、その後に与えた影響も含めて、映画史の上でも、無視できない映画だと思います。

評者

hacker

更新日時

2017年06月11日 10時32分

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