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怒りのキューバ/hackerのコメント

rating55.0000

怒りのキューバへのコメント

採点

rating5

コメント

映画史上最も自由にカメラが動いた作品の一つ

レビュー

1964年制作の、この映画は名のみ知っていましたが、先日のシネマヴェーラで、初めて鑑賞しました。

ソ連とキューバの合作ということで、カストロ政権のプロパガンダ作品ではあるのですが、何よりも、そのカメラワークに圧倒されます。手持ちカメラが中心なのですが、それがクレーンとワイヤを活用して、信じられないような動きとイメージを作りだしていています。

おそらく、社会主義二ヵ国の合作ということで、予算はふんだんにあったのでしょうが、それを良いことに、監督のミハイル・カラトーゾフと撮影のセルゲイ・ウルセフスキーが、やりたい放題やってしまった作品なのでしょう。見事な白黒の画面と相まって、これも二度と撮られることのない類いの映画です。

ところで、映画自体は、革命前のキューバを舞台にした、四つのエピソードから成っています。

最初は、恋人に隠れて、アメリカ人を相手に春を売る、ハバナの女性マリアのエピソードです。おそらく自分のホテルに女を連れ込むのを嫌がったアメリカ人が、彼女の家に押しかけるのですが、翌朝の明るい日差しで見る周囲のスラム街の様子に、彼だけでなく、観客も唖然とします。そして、狭い空間で、動きまわるカメラが素晴らしいです。

次は、小作人の農夫ペドロのエピソードで、彼が子供たちとサトウキビの収穫をしていたところ、急に現れた地主から「この土地は売ったから、即刻立ち退け」と言われます。子供たちに、金を与えて遊びに行かせた後で、ペドロは結局のところ自分のものでなかった、畑と家に火を放つのです。マリア篇とはうって代わって、広い空間での炎の凄まじさと、それをものともしないカメラと演技者に圧倒されます。

三番目のエピソードは、ハバナの学生エンリコのカストロ支持運動が描かれます。彼が指揮するデモ隊への放水と催涙弾、長廻しでとらえられた階段での弾圧の様子は、もちろん『戦艦ポチョムキン』を意識していたでしょうが、撮影する側もされる側も、必死だったことが分かります。そして、圧巻は、デモで射殺されたエンリコの葬儀と参列した大群衆の描写で、まぁ観てください、としか言いようがありません。

最後のエピソードの主人公は、山岳地帯の農夫マリアーノで、妻子と平和に暮らしていたのが、突然の空爆(誤爆)によって、全てを失い、カストロ率いるゲリラに加わるという話です。全エピソードの中で、最後ではありますし、最も宣伝色の強い仕上がりですが、ここでも、空爆の迫力には驚かされます。

さて、冒頭に述べたように、本作品は基本的にはプロパガンダ映画ではあるのですが、お分かりのように、「偉いさん」を全く登場させずに、抑圧された人々の視点からキューバ革命を描いている点に、監督のささやかな抵抗を感じます。もっとも、それ以前に、やはり白黒画面の美しさとカメラワークの迫力で、記憶に残る作品であることは間違いありません。

傑作です。

評者

hacker

更新日時

2013年09月25日 13時30分

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