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逃亡者/hackerのコメント

rating33.5000

逃亡者へのコメント

採点

rating4

推薦数

+1

コメント

とにかく白黒の画面が国宝級に美しい作品です。

レビュー

ピーター・ボグダノビッチのジョン・フォードへのインタビューを読むと、この作品はフォードのお気に入りだったそうです。

「私としては文句ない出来だった。大衆的では決してない。批評家は高く買ってくれた。だからというわけではないが、この作品は大衆受けするものを少しも持ってない。しかし、この仕事には大きな誇りを持っている。」(『インタビュー ジョン・フォード』より)

物語は、カソリックと酒が禁止されているという想定の中南米(明らかにメキシコですが)の国を舞台に、ヘンリー・フォンダ演じる司祭の逃亡と信念の迷いを描いたものです。登場人物には、赤ん坊を抱いたインデイアンの女性マリア以外には名前が与えられておらず、物語全体が象徴的なものであることが分かります。

しかし、禁欲的な展開かというと、全くそんなことはなく、禁止されている酒を飲んで登場人物が酔っ払う場面や、かくまっている司祭から注意をそらすため、マリアがテーブルの上に乗って、スカートを膝までたくしあげて踊る場面など、淫靡と言ってもよいような雰囲気を醸し出しています。また、ミサをするためのワインがなくて、それを捜し歩く司祭が、ワインでもブランデーでも酒に変わりはないだろうとブランデーを勧められる場面などは、滑稽ですらあります。

ですが、きれいごとばかりでなくて、醜悪な現実の中で、主義主張を守り抜くことの意義を語っていると、映画全体を理解するべきなのでしょう。「私は強情で融通のいきかない監督だ」(前掲書より)と語るフォード自身の映画作りの姿を反映させたものとも言えそうです。

もっとも、この作品の最大の価値は、その美しい白黒の画面にあるように思います。

「あれ以上考えられない、素晴らしいフォトグラフィ、あの黒と白のかもし出す陰影はどうだ!いいカメラマン、ガブリエル・フィゲロアとつき合えてよかったよ。われわれは適当な光量が得られるまで、待機したものだ。近頃の、光線の具合なんか気にせずに撮影を進めるのとは大違いだ。」(前掲書より)

近年の映画が失ったものの代表は、このように美しい白黒の画面でしょう。もちろん得たものも少なくないのは認めますが、「カラーでは影が黒くならない」と言ったヒッチコックの言葉を思い出します。

今回観たのは、恐らく日本に存在する唯一の35ミリフィルムでしょうが、何箇所か明らかにチョン切れていたのは、残念でした。もしデジタル復元版があるのなら、是非この画面の美しさを再度味わってみたいものです。

評者

hacker

更新日時

2013年07月18日 09時30分

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