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エロイカ/hackerのコメント

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エロイカへのコメント

採点

rating4

コメント

1963年に40歳で亡くなった、アンジェイ・ムンク監督の才能を感じさせる作品

レビュー

アンジェイ・ムンク監督の作品で知っているのは、遺作で未完の『パサジェルカ』(1963年)だけで、それも数十年前に観たきりなのですが、いくつかのイメージは今でも鮮明に覚えていて、それだけインパクトのある作品でした。

ちょうど今、渋谷のイメージ・フォーラムで行なわれているポーランド映画祭では、新旧取混ぜた映画が上映されていますが、生涯4本の長編映画しか撮っていない監督の一本である本作は、そこで観ることができました。


題名の『エロイカ』は注釈するまでもないでしょうが、「英雄」のことです。当初は、第2次大戦中の実話に基づいた、3話のオムニバスの予定だったのが、そのうちの一本の出来が気に入らず、二つの物語で構成された映画として仕上がりました。

『ポーランド風スケルツォ』と題された最初の物語は、ワルシャワ蜂起の際、赤軍が認知してくれるなら、ドイツ側ではなくて、ポーランド側に付こうという、妻(バルバラ・ポロムスカ)とできているハンガリー軍中尉の申し出を、何とか実現しようとする、勇気も愛国心もあるようには見えない中年男ジュジシ(エドヴァルト・ジェヴォンスキ)の、戦場を右往左往する奮闘(?)を描いたものです。

この滑稽味(ブラックなものも含めて)あふれる物語は、とにかく、徹底的に奥行きにこだわった画面作りが印象的です。中でも、川辺で一休みしている主人公の背後の土手からドイツ軍戦車が姿を現すカットは、一度見たら忘れられないでしょう。そして、最後は、主人公は浮気者の妻の元を去って、蜂起軍のいるワルシャワへ戻るのですが、ワルシャワ蜂起が悲惨な最後となったのを知っているだけに、気楽な様子で去っていく「英雄」の主人公の後ろ姿には、複雑な思いが残ります。

二番目の『オスティナート・ルグープレ(悲痛な執拗反復)』では、うって変わった重苦しいタッチで、将校捕虜収容所という狭い空間で、舞台劇のように物語が展開されます。物語の中軸になるのは、捕虜収容所から唯一脱走に成功したと言われ、伝説化した英雄となっているザヴィストフスキ(タデウシュ・ウォムニツキ)が、一部の古参兵によって兵舎の天井裏にあるボイラー内にかくまわれているという設定です。

こういう作られた「英雄」をいかに守るのか、という展開は、『ポーランド風スケルツォ』と併せると、題名とは裏腹に、英雄というものに対する、ムンクの冷めた見方を感じ取ることができます。

しかし、最も印象的なのは、『ポーランド風スケルツォ』とはあまりに違うスタイルながら、共に、実に映画的な閃きを見せている点で、この物語でも、収容所に閉じ込められ続けていることがつくづく嫌になり、室内から無断で外の無人の野外に出て行った将校が射殺される場面の冴えは、やはり只者ではありません。


交通事故で亡くなった監督というと、もちろん、テオ・アンゲロトプスがいるわけですが、アンジェイ・ムンクは後10年でも生きていたら、どんな傑作を残してくれたのか思わせる意味で、数々の傑作を残したアンゲロトプス以上に残念な気にさせてくれます。今回観ることのできる、他の作品にも期待しましょう。

評者

hacker

更新日時

2012年11月27日 12時53分

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2021年12月08日 04時02
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