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ヒア アフター/hackerのコメント

rating55.0000

ヒア アフターへのコメント

採点

rating5

コメント

一見、死後の世界を扱っているようですが、クリント・イーストウッドらしく、孤独な魂の触れ合いがテーマであり、いつもながら、マイノリティーに対する監督の温かい眼差しが印象的です。

レビュー

主要登場人物は3人です。

ボーイフレンドとスマトラにバカンスに来ていたフランス人キャスターのマリー(セシール・ドゥ・フランス)、彼女は津波に巻き込まれ、臨死体験をします。その時に見えた不思議なヴィジョンは、彼女のトラウマとなって、パリに帰った後、仕事にも支障をきたすようになります。

次は、ロンドンで、ヘロイン中毒のシングル・マザーと暮らしている一卵性双生児ジェイソンとマーカス(フランキー&ジョージ・マクレラン)です。マーカスは兄のジェイソンに何かと頼っていますが、ある日、自分の代わりに使いに出たジェイソンは、不良にからまれ、逃げようとして、交通事故で死んでしまいます。母親も治療のために施設に入ることになり、里親に預けられることとなったマーカスは、深い喪失感に苦しむことになります。

3人目は、サン・フランシスコに住む、相手の手に触れることで、霊界と交信する能力を持つジョージ(マット・デイモン)です。彼はそれをビジネスとしてきましたが、死者とばかり語り合い、他人の秘密にも踏み込んでいく生活に疲れ、「(自分に与えられたのは)才能ではなくて呪いだ」と言い、それを離れて、港湾労働者として生活しています。

この3人は、皆何かを失った人間です。

マーカスは言うに及ばず、マリーは死後の世界を覗き見たばかりに、今までの社会的地位とボーイフレンドを失うことになります。彼女は、自分が見た世界についての本を書き上げるのですが、フランスの出版社からは出版を拒否されます。

ジョージは、自分の能力ゆえに、普通の人間と交わった生活を送ることができません。料理教室で知り合い、お互いにとても好意を持っていたメラニー(ブライス・ダラス・ハワード)とも、その能力ゆえに、触れられたくない彼女の過去の秘密を知ってしまうことになり、別れてしまいます。

この3人の三つの都市で並行に語られる展開が、最後には、ロンドンで見事に結びつくのですが、そこに至るまでの伏線を張りながら、観客を混乱させないで進行するシナリオは見事な出来栄えだと思います。しかも同時に、この3人の喪失感と孤独は、痛いほどこちらに伝わってくるのです。その背景にあるのは、マイノリティー=弱者に対する、イーストウッドの、同情ではない温かい気持ちだと思います。

ラストで、自分の分身を亡くしたマーカスがきつく母親と抱擁しあう場面、ロンドンのシティーのフィッシュ・マーケットで、初めてデートをするマリーとジョージが握手する場面、既に霊界を経験したマリーとは、ごく普通の人間同士のように、何も感じることなく握手のできるジョージの喜びと、自分の経験した世界を実感として知っているジョージに会えたマリーの喜びとが混じりあう場面の感動は、素晴らしいものがあります。

素晴らしいのは俳優陣もそうで、主役の3人も見事ですし、出番は多くないのですが、なんとも可愛らしく無邪気に見えるものの、心に傷を抱えるメラニー役のブライス・ダラス・ハワードの素晴らしいこと!彼女は、その実力を十分発揮する機会に、なかなか恵まれていないように思います。他にも、一場面だけですが、懐かしいマルト・ケラーも印象的です。あと、セシール・ドゥ・フランス(すごい芸名ですが)のきれいなこと!近年のフランス女優では一番の美人かもしれません。

最後ですが、もちろん、いつもながらのイーストウッド演出も冴えています。いつも感心するのですが、これだけズームをきかせたり、移動撮影をしたり、手持ちカメラも使ったりしながら、画面の動きを意識させない監督は他にはいないと思います。オーソドックスな切り返しが必要な場面では、きっちりそれを使いますし、どのシーンでも、人物の位置関係が分からなくなるようなことはありません。本当に、骨の髄まで、映画の文法が染みついているのでしょうね。

題材にしても、イーストウッドが人を殺すことの重みを繰り返し描いてきたことを思い起こせば、違和感は感じませんでした。

評者

hacker

更新日時

2012年05月22日 13時05分

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