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引き裂かれた女/hackerのコメント

rating55.0000

引き裂かれた女へのコメント

採点

rating5

コメント

愛のサスペンス劇場の名手、本領発揮の一本。

レビュー

クロード・シャブロル晩年の傑作です。かって、ヌーヴェル・ヴァーグ三羽ガラスと呼ばれた、ゴダール、トリュフォー、シャブロルのうち、生き残っているのは、ゴダールだけになってしまいました。しかし、3人のうち最も格下と見られ、商業主義に堕ちた、と揶揄されていたシャブロル(私もずっとそう思っていました)だけが、ヌーヴェル・ヴァーグの時代に発表した作品群に劣らない、あるいは、それより優れた作品を発表し続けていたのです。

個人的な意見ですが、ゴダールの最高作は『女と男のいる舗道』(1962年)と『ウィークエンド』(1967年)ですし、トリュフォーは『大人は判ってくれない』(1959年)と『柔らかい肌』(1964年)です。もっとも、この両名の最高作を問われて、ゴダールの場合は近作、トリュフォーの場合は晩年の作を挙げる人は、やはり少ないでしょう。シャブロルの場合は、『肉屋』(1969年)なのですが、ただ、本作も、それに負けないぐらい素晴らしいです。近年にいたるまで、こういう傑作を撮っていたとは、あらためて、己の無知を恥じる次第です。

物語は、『柔らかい肌』を連想しますが、中年の結婚している著名な作家シャルル・サン・ドニ(フランソワ・ベルレアン)と、若い娘ガブリエル・ドネージュ(リュディヴィーヌ・サニエ)の関係を中心に、娘に惚れているブルジョワのわがまま息子ポール・ゴザンス(ブノワ・マジメル)との三角関係が展開され、最後は犯罪に至るという、シャブロル得意の「愛のサスペンス劇場」です。

まず、役者が皆素晴らしい!まずは、リュディヴィーヌ・サリエの無邪気さの中にエロティックな雰囲気も漂わせた、実にフランス人らしい美しさが印象的です。中年男のエゴイズムと嫉妬をむき出しにした作家を演じるフランソワ・ベルレアンも良いですが、幼年時の心の傷を持つブルジョアの青年を演じたブノワ・マジメルも、劣等感と優越感の混ざったキャラクタをよく演じています。出番は少ないのですが、彼の母親、息子を守るためにはなんでもする母親を演じたがキャロリーヌ・シオリも印象的です。彼女がガブリエルに語る、ポールの幼年時代の出来事も、結局のところ、本当だったのかも分からないで終わるのですが、利用するだけ利用して、相手を突き放す冷酷さは、際だっています。そう言えば、シャブロルは、『いとこ同志』の時から、ブルジョアと下層階級の対立という構図の物語を発表し続けてきましたが、本作もそうですね。あと、懐かしや、久しぶりのマチルダ・メイ、お年は召しても、妖艶です。

物語は、きちんと手順を踏みつつ、小道具(情事に使っていた部屋の鍵、ポールの持つピストル等、使い方もにくいです)も駆使して、最後の破局へと向かうのですが、こういうオーソドックスな展開の、しっかりした映画は、やはりシャブロルならではのものでしょう。同時に、起こっていることのすべてを、あえて見せずに観客に理解させるやり方は、現在の露出過多の作品が氾濫する中にあっては、新鮮ですらあります。昔の映画では、珍しくなかったのですがね。などと、年寄りの感想が漏れてしまいます。

なお、原題を直訳すると、「二つに切られた娘」という意味で、ラストのヒロインの姿を暗示しているわけです。同時に、マックス・オフュルスの『歴史は女で作られる』(1956年)のヒロイン、ローラ・モンテスの姿をも連想させます。

映画的要素のすべてが詰まった、シャブロル晩年の傑作です。

評者

hacker

更新日時

2011年05月08日 14時53分

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