みんなで作る映画データベース
  1. トップ
  2. 映画一覧
  3. ドラマ
  4. 男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花
  5. hackerのコメント

男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花/hackerのコメント

rating44.0000

男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花へのコメント

採点

rating4

コメント

寅さんとリリーの『浮雲』

レビュー

山田洋次が、この作品のことを気に入っているのは、よく知られています。もっとも、監督が気に入っているからといって、それがその監督のベストなのかは別の話で、逆の例を挙げると、山田洋次が気に入っていないと公言している『吹けば飛ぶよな男だが』も『なつかしい風来坊』も、個人的には大好きです。

この年末、早稲田松竹でリリーが登場する3本を続けて観る機会を得ました。この3本とも、公開当時に観ているのですが、実は、一番印象が薄いのが、この作品なのです。気に入った映画は何回も観る主義なので、結構細部を覚えていたりするものなのですが、その理由とすると、やはり恋愛映画の色彩が色濃く出ているせいで、当時はやや物足りなく覚えたからではないでしょうか。山田洋次のことは、喜劇映画監督になりたくなかった喜劇映画監督だと、ずっと思っていましたが、この作品などを観ていると、その感を強くします。

ところで、リリーというヒロイン(マドンナではありません)は、本質的には、腰の据わった「自由人」なのですね。そういう彼女が、沖縄で病に倒れ、生きる気力も失って、「死ぬ前に寅さんに会いたい」と手紙を出すところから、この映画の主筋は始まるのですが、沖縄に文字通り飛んで行った寅さんとの関係は、状況と言い、その「腐れ縁」振りと言い、今回再見して気付いたのですが、明らかに『浮雲』を意識していたのではないでしょうか。

他にも、今回気付いた点と言うと、病癒えて、退院したリリーは寅さんと同じ家に下宿する訳ですが、離れに彼女が寝て、母屋に寅さんが寝る、という状況にもかかわらず、帰宅した寅さんが、ごく自然に「お前も(風呂に)一緒に入るか」と声をかける場面があって、これは二人の男女関係をさり気なく語っている、と同時に、やはり『浮雲』の場面を思い起こさせるのですね。

もちろん、寅さん自身もリリー自身も「浮雲」です。殊に、リリーは筋金入りです。それ故、「男の世話になって生きるなんて、真っ平だ」と語る彼女が、「奥さんならば、別よ」としんみり言う場面が悲しいのです。公開当時の私には、こういう理解の仕方ができていなかったのでしょう。振り返って見ると、そう思います。

という訳で、この作品は上質の恋愛映画として、仕上がっています。山田洋次の近作を観ていても、思いますが、本当は喜劇以外の作品を、もっと撮りたかったのではないでしょうかね。

ところで、このシリーズ最後の作品『男はつらいよ 寅次郎紅の花』(第48作)にもリリーは登場するのですが、公開当時、日本にいなかったこともあって、未見のままです。ウィキペディアによると、浅丘ルリ子は、共演の渥美清があまりにもつらそうだったので、もしかしたら最後の作品になるかもしれないと思い、「寅さんとリリーを結婚させてほしい」と山田洋次に進言したとのことですが、50作まで撮るつもりだった監督は、それを受け入れなかった、とのことです。正直なところ、そういうエピソードを知ってしまうと、この最後の作品は、あまり観る気にはなれません。

あらためて、渥美清が死んだ時に、コメントを求められた浅丘ルリ子の「言葉がまとまらないので、コメントは差し控えさせてもらいます」という返答の重さと真摯さに感じ入る次第です。

評者

hacker

更新日時

2009年12月31日 16時52分

コメントの推薦

データがありません
2021年12月01日 18時29
2021年12月01日 18時29
©ずばぴたテック