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冬の旅/hackerのコメント

rating33.0000

冬の旅へのコメント

採点

rating3

コメント

「なんでドロップアウトしたの?」「路で飲むシャンペンの方がおいしいから」(本作中より)

レビュー

原題は直訳すると、「屋根も法も無く」ですが、「家も掟も無く」と訳しても良いでしょう。ついでですが、「屋根」若しくは「家」を意味するtoitの発音は、「君」や「あなた」を意味するtoiと同じなので、人間関係も無いことを示唆した題名とも解釈できます。

冒頭で、ヒッチハイカー若しくはホームレスの主人公モナ(サンドリーヌ・ボネール)の野外で発見された死体が映し出され、彼女の死にいたる軌跡を追うという形で映画は進みます。しかし、彼女が普通の高校生から、なぜドロップアウトしたかについては、ほとんど語られません。ドロップアウトして、冬のフランスの寒々とした田舎の風景の中をさまよう、現在の姿だけが描かれます。途中で、すれちがった人間たちとの「交流」も描かれますが、彼女自身が、彼らとは全く違う人間であるため、そこには普通の人間関係は生まれません。生まれそうになっても、彼女が拒否をします。それだけ、彼女は「自由」であろうとするように見えます。それが故に、悲惨な最期を迎えることになるのですが...ただ、この結末が、観客に哀れみの感情を起こさせるようなことはありません。一つには、冒頭で彼女の死を提示していることもあるでしょうし、もう一つには、これが自然な結末のように思えてしまうからです。

ある意味で、この作品は遅れてきたヒッピー映画です。底流にあるテーマも、1970年前後に、映画でよく取り上げられた「自由と孤独」です。ただ、このテーマの裏には、必ず「家族」若しくは「人間関係」がつきまとうもので、それは、一見「自由人」である寅さんが柴又から離れられないことからも分かります。冒頭で述べたように、この映画はその裏の部分を完全に断ち切っています。若い頃に、「完全な自由」というのを夢想したことがありますが、それを突き詰めていくと、残念ながら、現代社会では、この映画の主人公モナのような途しか残されていないのでしょうか。

かく言う私も、社会という枠組みの中で生きることを選択した以上、自由とはほど遠い状況で生きている訳です。少なくとも、これが自由でないということを意識している以上、「あんたの言ってる自由なんて、豚箱の中の自由さ」(岡林信康詞)と、ののしられることはないかもしれませんが...

結局のところ、この映画を気に入るかどうかは、主人公の生き様に、どの程度感情移入できるかでしょう。主人公は、見方によっては、単なる性格の悪い怠け者だからです。そういう意味でも、万人に受け入れられる作品ではありません。私はと言うと、今更、彼女のように生きられないのは、もちろん承知していますが、主人公に、ある種の妬ましさを感じないではいられませんでした。

「自由と孤独」への考察に満ちた一本です。

評者

hacker

更新日時

2008年12月04日 14時53分

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2021年12月05日 14時20
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