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肉体の悪魔/hackerのコメント

rating55.0000

肉体の悪魔へのコメント

採点

rating5

推薦数

+1

コメント

でっち上げの悪魔祓い(エクソシズム)をテーマにした、怪督ケン・ラッセルと怪優オリヴァー・リードがはなつ、実にパワフルな一本。

ネタバレ

このレビューは物語の核心部分が明かされています。

レビュー

1970年前後、ケン・ラッセルには、一部の熱狂的なファンがいました。TV出身の彼の作風は、クローズアップの多用と、たたみかけるような台詞、それにグロテスク若しくは悪趣味なエロティシズム、という特徴があり、その諸作は、実にパワフルなものでした。もっとも、残念ながら、近年の『白蛇伝説』などは見る影もないような衰えで、彼の注目作となると、やはり初期に集中しており、『10億ドルの頭脳』『ボーイフレンド』も好きですが、一本だけ挙げろと言われたら、ためらいなく、この作品を推します。

題材は、17世紀フランスの地方都市ルーダンで実際に起こった出来事で、悪魔使いの罪によって、火刑に処せられた教会司祭グランディエ(オリヴァー・リード)が主人公です。

当時フランスはルイ13世の時代で、宰相リシュリーは、地方分権制より、絶対君主制への移行を推し進め、結果的にそれは次王ルイ14世が実現するのですが、各地の城壁や砦の破壊を行っていました。しかし、ルーダンでは、グランディエが真っ向から反対し、その作業が難航していました。グランディエは、知性も教養もあり、説教や演説も巧みでしたが、美男であることあって、唯一の弱みが女たらしだという点で、そのため、妻や娘が誘惑された有力者も少なくなく、更に、中流階級出ということもあって、敵も多かったのです。

そんな時、ルーダンの女子修道院長ジャンヌ(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)は、会ったこともないグランディエの名声に恋焦がれ、遂には、精神に異常をきたし、性的妄想を抱くようになります。それを知った反グランディエ派は、院長をはじめとした尼の一団を、悪魔憑きに仕立て、その悪魔を操っているのがグランディエだということで、裁判に持ち込みます。政治的意図もあって、最初から判決が決まっている裁判の結果、グランディエは有罪となります。刑の直前、悪魔使いであったことを告白させようとするエクソシストの命で、両足の骨が砕かれる拷問にかけられながらも、「犯してもいない罪を告白できない」と、それを拒みます。そして、最後まで無実を訴え続けながら、火刑に処せられます。自らの身体が焼かれながらも、彼は群集に叫びます「私を見るな、自分たちを見ろ!」そして、轟音と共に爆破される城壁...

この映画の原作は、イギリスの文豪オルダス・ハクスリーが、10年かけて書き上げた『ルーダンの悪魔』です。そのタイトルは'The Devils of Loudun'であるのに対し、この映画の原題は「悪魔」'The Devils'となっています。ここで描かれている悪魔は、もちろん、権力の側であり、政治的目的のためには、罪をでっち上げることをいとわない人間たちのことです。それは17世紀のルーダンに限らず、現代にいたるまで続いている事実でもあります。

しかし、その過程を、弱者としての被害者ではなく、強者としての被害者を中心に描いた点において、この作品は珍しく、それを体現していたのが、独特の下品な魅力を備えたオリヴァー・リードです。彼と権力者たちとの激しいやり取りは、正にケン・ラッセルの本領発揮で、権力者側は言うに及ばず、被害者側も強者なので、その迫力には圧倒されます。

今にして振り返ると、裁判場面のクローズアップの連続といい、ドライヤーの『裁かるるジャンヌ』を意識していたのかもしれないとも思いますが、そちらが静かな迫力であったの対し、こちらは激しさを感じさせる迫力であり、全く異質の作品です。

近年、真摯なテーマで、こういうパワフルな作品が、あまり見当たらないのは、残念なことです。

評者

hacker

更新日時

2008年11月24日 10時26分

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