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イントゥ・ザ・ワイルド/ドンペリのコメント

rating44.0000

イントゥ・ザ・ワイルドへのコメント

採点

rating4

推薦数

+1

コメント

しみじみと感慨深い実話である。
誰にも告げずに旅に出、物質文明社会とおさらばし、アラスカの地で真理を追究しようとしたクリストファーという一人の青年の話である。

ネタバレ

このレビューは物語の核心部分が明かされています。

レビュー

登山家でありジャーナリストでもあるジョン・クラカワーが、クリスの旅の形跡を辿り、綿密な取材のもとに書かれたノンフィクション作品が、もとになっている。


裕福な家庭で育ち、優秀な成績で大学を卒業後、貯金を飢餓救済団体に寄付し、旅の途中で車も捨て、持ち合わせの金も燃やし、ヒッチハイクでロードムービーの体を成しながら、北へ北へと最終目的地であるアラスカを目指したクリス。
アラスカに辿り着いた彼は、大自然の中に身を置き、自由と孤独の中で、「生きる」という答えを模索しながら生きようとした。誰にも告げずに旅立ってから2年の歳月だった・・・・

今や、物質文明社会に身を委ねて生きている私たちは、どこかで折り合いをつけながら生きているのだが、それが決して正しいとは思っていない。化け物と化した文明社会は、様々な大切なものを失ってきていることも知っているし、そのツケが私たちを襲ってきていることもひしひしと肌で感じている。同時に文明社会と離れて生きていくことは、果たして可能だろうか、とも思うのだ。これを実行すると「北の国から」になる。


作品中から、クリスの確固たる信念と強い意志は生半可なものではなく、遊び半分の青春の旅というレベルではないことを窺い知ることが出来る。彼はあまりに純粋で真剣なのだ。知的さ故、真理を追究したいと思い、同時に自分を試したかったのだ。

両親は、突然消息を絶って生死も定かでない息子を心配し捜索願を出し、そして苦しむ。

「金持ちお坊ちゃまの我がままに過ぎない。親不孝もいいかげんにしろ。」と言う人もいるだろうか・・・・
だが、
ショーン・ペンが「クリスは間違っていると思うか?」と問いかけているようで、見る立場によって、様々に考えさせられる映画である・・・反体制、アンチハリウッドのショーン・ペンなればこそ。
ショーン・ペンは、この原作本に出会い、10年がかりで映画化にこぎつけたということだが、実際にクリスが辿った土地でロケを行うなど、本作に対する熱い思いと優しさに溢れた映画になっている。クリスが旅の途中で出会う人たちも、温かい目線で描かれているのだ。



クリスに影響を与えた一因に 彼の父親への不信感と両親の問題があることは、回想や語りで明らかになる。
クリスの出生の衝撃的な事実(父親に非)に加え、彼の家庭はみせかけのものだった。その上、父親は母親に対して暴力夫であり、「家の中では私が神だ」とのたもう絶対的権力を振りかざす男だったのだ。
当たり前のように繰り返される両親の夫婦喧嘩を、片寄せ合ってやり過ごしてきたクリスと妹は、いつしか「どうぞご勝手に」と思うに至る。
地元アトランタの大学を優秀な成績で卒業し、ハーバードの法科入学を約束された息子に向かって「(褒美に)新車を買ってやる」という父親に、「僕が新しい車なんか欲しいと思っているの?」とクリスが答えるのを聴いて、私は感動するのだが、この父親の価値観と、息子をまるで理解出来ていないことが解る象徴的な場面だ。だからと言って、クリスが反抗心からこの旅を実行するという低次元のものでないことは、充分解るように描かれていることを言っておきたい。

冒頭で「義務のためだけに大学を卒業した」と語りが入るが、クリスはそこまでは親を満足させるためだけに生きてきたのだろう。
クリスにとって、初めて自分の意思と決断で行動したのが、この旅立ちだったのだろうな〜。

私の場合、親の立場から見ることが出来、クリスが消えてからの両親の苦しみの2年という年月は、自分たちが子供たちに苦しみを与えてきた償いとしては決して長くはないと思う。さらにクリスを失った哀しみを乗り越え、クリスを誇りに思う域に達していることを願って止まない。
我が子を「理解してあげること」、これがなかなか難しく、そして最も大切なことなのだ。

ラストに本人の写真が出るが、彼はなんと、ハンサム!なのだ。加えること頭脳明晰、裕福とくれば、傍目には何の不満があるのだと言われかねないのだが、果たして贅沢な悩みだろうか。私はそうは思わない。
人は生まれた環境は選べず、その中で育ち、自己が確立されていくことに、何が正しく、何が間違っているかは、永遠に答えが出ないものだと思う。

ラスト、父親(ウィリアム・ハート)は、大きな喪失感と共に、それを悟った顔に見えた・・・・。



初めて見た俳優、クリス役のエミール・ハーシュがなかなか自然で良い。ショーンペンの指導の賜物だろうと思うが、見ているうちに彼がどんどん良く見えてくる。良い作品って、そんなものなのよね。
このエミール・ハーシュは、今は亡きリヴァー・フェニックスに似ている瞬間が多々あったのが、個人的に印象に残る。




アメリカ初黒人大統領誕生の記念すべき日に記す。

評者

ドンペリ

更新日時

2008年11月06日 14時22分

コメントの推薦

素晴らしい洞察 『フィフス・エレメント』に登場するアメリカ大統領が黒人であったことの驚きは、今でもよく覚えています。少なくとも、肌の色は別として、語りたいこと、訴えたいことを持っている人間こそが、そういう地位に就くべきです。期待しましょう。 2008-11-06
hacker
2021年12月04日 00時25
2021年12月04日 00時25
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