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デビルズ・リジェクト 〜マーダー・ライド・ショー2〜/カトキチのコメント

rating44.5000

デビルズ・リジェクト 〜マーダー・ライド・ショー2〜へのコメント

採点

rating5

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コメント

実はキリスト教の概念において、人間というのは生まれながらにして悪だというのがある(だからみんな教会に行く)そして、人間というのは神にコントロールされてる生き物だから、人間には自由意志がないとされている。じゃあ人間が本当に自由になるにはどうすればいいのか?はたして神はいるのかいないのか?それを提示したのが『デビルズ・リジェクト』だ。

レビュー

『デビルズ・リジェクト』は近年公開された映画の中でもかなりの完成度を誇り、ホラー映画とは一言で言えない魅力がびっしり詰まっている。ロード・ムービーであり、殺戮映画でもあり、ホラーでもあり、サスペンスでもあり、復讐劇でもあり、銃撃戦も、血しぶきも、強烈なバイオレンスもある。

んで、評価されてる所では評価されてるのだけれど、ほとんど知られておらず、とてもとても残念だ。読んでないが、映画秘宝でもかなりプッシュされてたらしいので、それは嬉しい限りなのだが、『デビルズ・リジェクト』を全国で上映しないでどうする!と憤慨してたのはきっと私だけではあるまい。

『デビルズ・リジェクト』は様々な映画がぶちこまれた作品だが、タランティーノのようにこれ見よがしなもんはなく、その映画達のスピリットを脈々と受け継いでるだけで、映画自体は完全なオリジナルテイストに溢れている。基本的に空気感はアメリカンニューシネマなのだが、『デビルズ・リジェクト』の中には、『ワイルド・バンチ』、『ゲッタウェイ』、『バニシング・ポイント』、『俺たちに明日はない』、『悪魔のいけにえ』、『時計じかけのオレンジ』、『タクシードライバー』などがぶち込まれていて、これらが好きな人にとってはたまらない作品であり、むしろ『キル・ビル』のように、『デビルズ・リジェクト』を観れば、70年代の映画を味わえるから、それだけで満足という人も多いと思うのである。

上記の映画に共通するものは何か?それはロクデナシの極悪人が主人公であるという事だ。『ワイルド・バンチ』や『俺たちに明日はない』などは主人公達が平気で人をぶっ殺すような極悪人であるが、どちらも主人公達が魅力的に描かれており、特に『ワイルド・バンチ』に至っては男泣き必至の作品となっている。今では両方とも映画史に残る傑作となっているが、当時はかなり非難された。

そして『タクシードライバー』や『時計じかけのオレンジ』は善と悪の構造やその倫理観をぶち壊す映画だという事。一体何が正しくて、何が悪いのか?という事を根底から揺さぶったのがこの作品達だ。『時計じかけのオレンジ』はバイオレンスシーンが飛び切りカッコ良く描かれているため、いくつかの暴力事件を誘発したが、それはキューブリックが意図的にした演出だった事は有名である。

さて『デビルズ・リジェクト』である。

『デビルズ・リジェクト』はこれらの映画のテーマを1時間40分の中に見事盛り込んだ作品で、それらの映画を凌駕するほどの衝撃、感動がある事は私が言うまでもないわけなのだが、まず、『デビルズ・リジェクト』の主人公達は恐らく映画史上最も最強の極悪人だ。いや、もっと極悪なヤツらは映画の中に居ると思うのだが、ここ近年でそういう映画も鳴りを潜めていた事は否めない。主人公一家は総出で快楽のために人殺しをし、その数や残忍性はとてつもない。

ところが、一家に身内を殺された保安官に追われる事から、映画のテーマはどんどん違う方向に加速していく。それが『タクシードライバー』や『時計じかけのオレンジ』と一緒で善と悪に対する倫理観の崩壊だ。

『デビルズ・リジェクト』は『ワイルド・バンチ』のクライマックスのようなシーンから始まる。もっというと、『ガントレット』とか『明日に向って撃て!』とかもそうかもしれない。警察に完全包囲された殺人一家だが、降伏する事なく、ファックを言いまくって、撃ち合いになる。このワンパンチから一気に引き込まれるが、ここから逃げる事に成功した兄弟の逃避行により、映画はロードムービーの体制をとり始める。ところが、映画は真っすぐ進まない。『悪魔のいけにえ』になったり、それこそ『フロム・ダスク・ティル・ドーン』になったり、『ペーパームーン』になったりと、様々な表情を見せる。変態殺人一家の話だが、時にユーモアもあったりする。胸くそ悪くなるくらい残忍なシーンもあるし、主人公達に共感出来るどころか、むしろ反感を買うくらいの演出も徹底しており、どのように観たらいいのか分からなくなってしまう。ところが、ところがである。後半に行くに連れ、主人公達の逃避行にハラハラし、ラストには泣きそうになる自分がいた(というか、泣いた男達も多かったはずだ!)

家族愛、生き様、体制に逆らうとはどういう事なのか?人間の自由とは何か?神はいるのかいないのか?これが『デビルズ・リジェクト』のすごさ、素晴しさである。これはアメリカンニューシネマにはよくある展開だが、ここまで徹底して突き詰めたのは『デビルズ・リジェクト』だけだろう。

殺人シーンはとても生々しく、殺人鬼に追いかけられるシーンは『悪魔のいけにえ』のそれを強烈に感じさせる。後半、その殺人鬼が同じように警官に追われるシーンもあるが、ここもまったく同じように撮ってるのがおもしろい。

ミュージシャンである監督のロブ・ゾンビだけに、音楽へのこだわりも相当なもんだ。スライドギターのメインしたブルースを使うなど、凝りに凝っているが、ラストにかかる「フリー・バード」もナイスな選曲と言わざるを得ない。

血まみれで痛々しくて、善人が1人も出ない『デビルズ・リジェクト』だが、これは自由意志への挑戦と人間らしい生き方と人間の本質だ。個人的には『イージー・ライダー』と『わらの犬』を彷彿とさせる傑作である。

評者

カトキチ

更新日時

2008年03月05日 09時19分

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