+3
私同様、予告編をごらんになった方もいらっしゃると思いますが、おぼろげに想像していたのとは違い、言い換えると想像よりずっとずっと良い作品でした! パチパチパチ・・・拍手!
このレビューは物語の核心部分が明かされています。
邦題から受ける印象で想像したものより、もっと骨太で感動的だった。
逆の意味で良い方に転んだ邦題だったかしら・・・。
でも「なんだ音楽映画か」と思って興味を示さない方もおありかとも思うし、複雑。
素晴しい映画でした。
原題の「DAS LEBEN DER ANDEREN」は「あちら側の人々の生活」という意味らしいが
邦題を「善き人のためのソナタ」としたことで、
『善き人のためのソナタ』というピアノ曲に「すべての芸術」を重ねたように解釈出来る点は、まあいい。
でもしかし、邦題から受けるイメージの音楽中心の映画ではありませんでした。
その証拠に そのピアノ曲の演奏は 短時間さらりと流れるだけだし、
特に強烈な印象で響いてくる曲でもなかった。
原題からは、東のシュタージ(国家保安省)のヴィースラーが「あちら側の人々の生活」を
監視・盗聴していくうちに、芸術の素晴らしさや 愛と信頼の素晴らしさに心が揺り動かされ、
(党上層部の腐敗した姿に辟易していたのと同時進行であると私はみていた)
彼の内面に変化が起こり、それが確信に変わり、彼は心の自由を勝ち得たという大筋が見えてくる。
ヴィースラーは劇作家ドライマンを盗聴する中で、恋人とのSEXシーンをも聴くことになるが
彼は決して覗き趣味でそれを聴いてはいなかった。彼は愛の素晴らしさに触れたのだ。
愛し愛されるもの同志が結ばれることこそが美しいと思い、それに感動すらしていたのだ。
二人の愛が壊れないように密かに応援もする(酒場のシーン)。
彼は盗聴により、人間本来が持てる感性が揺すぶられていくのだった。
体制側の堅物だったヴィースラーが盗聴器から流れるピアノの音色を聴いて涙を流す場面に
このテーマを凝縮して見せたと言えましょう。
「芸術と愛」を愛する者なら、誰もが深く静かな感動を得られる映画だと思います。
それも 今まで明らかにされなかった東のシュタージを見せながら・・・なので感動するのだ。
東と西を区切る敷居のごとく立ちはだかった壁。
ドライマンがタイプライターを部屋の境である敷居の下に隠したのも
「東西の境」を意識した演出なのでしょう。
ラスト、
常套手段かも知れない、ありがちかも知れない、でもそこまでを緊張感と共に観てきた私には、
そこに書かれた文字には、感動の戦慄が走った。
いただいた劇場鑑賞券があり、本日昼間ようやく観に行けた。
劇場を出たら雨が降っていた。
傘を差しながら渋谷の駅まで一人でトボトボと歩きながら
ずっと映画のことを考えていた・・・そう、感動がいつまでも収まらなかったのだ。
台詞も少ないヴィースラー役ウルリッヒ・ミューエは ヘッドホンを付け、
盗聴しながら心の動きを見事に表情のみで演技していく。
途中からは彼に感情移入しながら見ていくことが出来たので、
ラストの文字を読んだ時の衝撃と感動は人一倍大きかったと 自己分析している。
★四捨五入です。
2007年04月17日 22時20分
参考になる |
2007-04-18 |
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2007-04-18 |
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素晴らしい洞察 |
2007-04-17 |