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カポーティ/hackerのコメント

rating44.3333

カポーティへのコメント

採点

rating4

推薦数

+1

コメント

「そのとき、眠りに落ちていたホルカムでは、その音ー結果的に六人の命を絶つことになる散弾銃の四発の轟音ーを耳にしたものはいなかった。」

カポーティ著『冷血』の出だしの一節です。家族四人を殺害した二人の犯人、この犯罪における加害者と被害者の命を同列に数えている、何気なく、かつ象徴的な一節ですが、今となっては「六人の命と一人の天才の作家生命」と置き換えても良いでしょう。

ネタバレ

このレビューは物語の核心部分が明かされています。

レビュー

正直なところ、映画としては欠点が少なくはないと思います。単純に比較できるのかは別議論にしても、出来という観点からは、ロバート・アルドリッチと並ぶハリウッド反骨の士であった、リチャード・ブルックス監督の『冷血』の方が上だと思います。

一番目立つ欠点としては、カポーティという題材と、殺人犯であるペリー・スミスという題材、この二つの魅力的な題材を同時に追おうとして、結果的にどちらも、もう一つ掘り下げに欠けるように感じられることでしょうか。特に、両者とも、家族状況が大きなキーポイントのはずなのですが、これらが、適切に表現されていたとは思いません。例えば、前述した映画の『冷血』では、ぺりー・スミスの美しかった母親が、酒に溺れ、男を自宅に連れ込んでチーク・ダンスを踊っている姿を、子供達が見つめている、という悲惨な状況が描かれていますが、この映画では、そういう点は簡単な言及があるだけです。ですから、カポーティが、母親に見捨てられた、自分の子供時代を語る時、犯人との同一性を観客が意識するのが難しいのです。それと、重要な会話の部分になると、クローズアップのカットバックの連続になってしまうのは、いささか平凡すぎはしないでしょうか。

これは勝手な想像なのですが、本当は、もっと長い映画にしたかったのではないでしょうか。出来上がった作品を観ていると、そう思います。

ただ、このような欠点にもかかわらず、観終わった後に、心に残るものは重いです。実生活でもよくあることですが、何かを完成させるために何かを犠牲にすることへの必然性と偽善性、カポーティの映画では描かれることのなかった残りの人生の悲惨さに思いを寄せる時、何とも言いようのない救いのなさに、沈み込むのは私だけではないと思います。

演技陣の話をすると、もちろん、カポーティ役のフィリップ・シーモア・ホフマンは素晴らしいのですが、抑えた、しかし的確な演技を見せてくれたキャサリン・キーナーも素晴らしいです。

最後ですが、こういう作品を作り上げた、アメリカ映画人たちのインデペンデント魂に敬意を表します。なかなかできることではありません。製作に係わった大勢の映画人のリストを見ていると、そう思います。

評者

hacker

更新日時

2006年10月09日 16時14分

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