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冒頭から、実年齢より老け役のジャック・レモンの演技にひたすら圧倒されます。
あまりに巧くて切なくなる・・・。
このレビューは物語の核心部分が明かされています。
『摩天楼を夢みて』のジャック・レモンは
老いて成績が取れない哀しいサラリーマンという役どころを哀愁たっぷりに見事に演じましたが
本作はそれより前の作品だったのですね。こちらは‘老人役’です。普通のおじいちゃんです。
子供達もすでに独立し所帯を持ち、おそらく年金生活であろうどこにでもありそうな老夫婦。
長い夫婦生活の間に歴然と出来上がった夫婦の形がある。
この夫婦は、奥さんが気が強くどちらかと言うと口が悪く、はっきりモノを言うタイプで
穏やかな優しい夫の方がソレを許して合わせてきたという歴史が見える。
今やリタイア組みのジェイク(ジャック・レモン)は
日常をテキパキこなすしっかり者の奥さんにすべて任せっきり。
て言うかあれほど何でも先走りしてやられたら、何も出来やしないさ、という見方も出来る。
スーパーにも奥さんにトボトボ(まさにこんな感じ)と着いて行く。
奥さんはその日のセール品のチラシを持って、ここでもテキパキと買い物をする。
スーパーのお肉屋さんで「うるさいのが来たぞ」と言われるほどのしっかり者。
日本でも仕事をリタイアした後、何もすることもなく魂の抜け殻のようになり
奥さんの後をついてまわるダンナ組みを‘濡れ落ち葉族’という言葉で表現したのは
何年くらい前でしたかしら・・・。
そんな言葉を思い出させてくれるジャック・レモンとオリンピア・デュカキスの老夫婦です。
その気丈な奥さんが心臓麻痺で倒れてしまうことから
家族達に変化が現れるわけです。
ウォール街でバリバリのビジネスマンをしている息子は
母親が倒れたという連絡を受け、久しぶりに実家に戻ってくる。
幸い母親の病状が快復すると 今度は父親が・・・・。
息子のジョン(テッド・ダンソン)はそのまま実家に留まり、父のケアをすることになる。
過去に離婚して以来仕事に没頭してきたジョンは、これを機会に
長い間疎遠で会話を持てなかった自分の息子ビリー(イーサン・ホーク)とも向き合うようになり
改めて父子の関係をみつめなおすことになる。
本作のテーマである‘両親の老いと家族の絆’という問題は
高齢化社会に突入した今、考えさせられる映画です。
ある年齢になれば誰しも親の老いという問題は切実に迫ってくるでしょう。
幸いにも私の両親はまだ元気ですが それでも老いは如実に表れてきています。
どのような形が待ち受けているかは未知ですが
いつかは親を送らなければならないという局面と相対する時がくるでしょう。
親を介護している友人の話などを聞くと 人ごとではない年になってきた私です。
そしてこの映画、初めて観た時の感想とは違い、身近に感じ現実的でした。どこにでもありそう。
実年齢より老け役で 老いを演じたジャックレモンの演技に以前には感じなかった感動を覚え、
演技ではないと思えるほどのリアルな演技に痺れました。
でも彼、演技なんですよね〜。巧いですね〜。
老いを素晴らしく演じられたらある意味敵いませんね。
今は亡きジャックレモンは素晴しい俳優人生だったのだな〜と感慨にひたりました。
コメディ俳優として名を馳せていた彼の‘しみじみ系’の演技は絶賛に値する。
*奥さん役のオリンピア・デュカキスもとってもいい。ああいうおばあちゃまいる〜。
*娘の婿さん役にケビン・スペイシー。若い。
*孫のビリー役にイーサン・ホーク。かわいかったのね〜彼。ファンの方は押さえておかないと。
★作品全体としてはテレビドラマのような感覚なので ちょっとだけ残念。
2006年09月09日 02時41分
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2006-09-09 |