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反戦映画はつまらない
多くの戦争映画はもちろん反戦映画であり、戦争の悲惨さを描いています。しかし、ほとんどの映画では主人公たちが「活躍」するシーンが含まれます。激しい戦闘シーンの末、「敵」を殲滅する瞬間にカタルシスを感じることはないでしょうか。戦争を否定しつつも、兵士達を称える英雄箪としての側面はないでしょうか。聞いた話ですが、アメリカの映画館では戦争映画で米軍が敵に攻撃するシーンで拍手喝采が起こることがあるらしいです。
本作では、そういう人たちが(もしいたとしたら)拍手喝采をするのが非常に難しい内容となっています。なにしろ、カタルシスを感じるようなシーンが極端に少ない。戦闘では(映画として見える範囲では)負け続けだし、戦中戦後ともに酷い話ばかり。徹底して「戦争に関わるとろくなことがない」ことをアピールします。
特に印象に残るのが、個人の立場の弱さ。戦争やその裏舞台が国家の都合による茶番である、ことが分かった上でも逃げることができない恐ろしさ。降りることのできない大きな船に乗せられて、ぼんやりと自分らの望まないどこかへ連れて行かれるという現実。
それから、大衆の英雄好きが国家に利用されているんだという糾弾。後編「硫黄島からの手紙」では、天皇陛下を盲信して玉砕する日本人を描き、その対比として、英雄を盲信して戦争を加速させるアメリカ人を同列に描き出して批判しているのだと思います。こういう内容はいままでに(俺が知る限り)なかったと思いますし、かなり勇気のいることだったのではないでしょうか。
観終わってまず「スピルバーグの戦闘シーンが少なくて食い足りない」「でも艦砲射撃すげえ迫力!」なんて感想が浮かぶ俺のような人間こそ、かみ締めて味わうべき、真摯な本物の反戦映画です。
余談:
3人がスタジアムで星条旗を掲げるシーンが秀逸。一見誇らしげな彼らが実は見ていた悪夢を、スタジアムにいるみんなが感じることができたなら、本当に戦争はなくせるかもしれません…。
2006年12月20日 05時50分
素晴らしい洞察 |
2006-12-21 |
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参考になる |
2006-12-20 |