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ゴスフォード・パーク/dreamerのコメント

rating33.6667

ゴスフォード・パークへのコメント

採点

rating5

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+1

コメント

アメリカ・インディーズ映画界の巨匠ロバート・アルトマン監督の群像劇の秀作「ゴスフォード・パーク」

ネタバレ

このレビューは物語の核心部分が明かされています。

レビュー

1932年11月、イギリス郊外の「ゴスフォード・パーク」と呼ばれる、カントリーハウスで、あるパーティが催されました。
貴賓が優雅に来場する「階上」とは対照的に、メイドや従者は大忙しです。そんな「階下」では、虚飾に満ちた「階上」の人間のゴシップが乱れ飛んでいます。

そして、2日目の晩餐会の席上、客の一人であるアメリカ人の映画プロデューサーが、イギリスの貴族階級をネタにした最新作の映画の構想を披露します。
その内容はというと、舞台はカントリー・ハウスで、夜中に殺人事件が起こり、全員が容疑者という設定です。

すると、その夜、この映画のシナリオ通りに、邸内で殺人事件が発生します-------。

「ナッシュビル」「ウエディング」「ショート・カッツ」等の群像劇を得意とする、アメリカ・インディーズ映画界の巨匠ロバート・アルトマン監督が、この映画で仕掛けたのは、ミステリーの女王アガサ・クリスティ風のミステリー仕立ての群像劇です。

このパーティのホストは、「ゴスフォード・パーク」に住むウィリアム・マッコドール卿とシルヴィア夫人。
そこに、シルヴィアの妹夫婦二組、少し身分の低い夫婦一組、それから娘婿候補とその友人、親戚の俳優と映画プロデューサーといった面々が集まって来ています。

そして、これだけではなく、ゲストのそれぞれには、必ずメイドや従者が付き添っていますし、このマッコドール家にも執事や料理人等、数えきれない程の使用人が働いています。

このように、もうなんとも複雑なアンサンブル・キャストを巧みにさばいていくアルトマン監督の老練ぶりには、改めて舌を巻いてしまいます。

アルトマン監督は、常に2台のカメラを同時に回し、また出演者全員にワイヤレス・マイクを装備させる事で、一つの空間で多数の人間が同時に会話をしている光景をリアルに演出していったといいます。

こうして、映画の弱点である二次元的な制約が補われ、舞台さながらの空間的な広がりが生まれたのです。

こうした映画的な技巧もさることながら、これぞアルトマン監督の至芸と思わせるのが、全てを使用人の目を通して描く事で、効率的に、尚且つ、より効果的に、各々の人物像を鮮やかに浮彫りにしていった事です。

我々観る側は、「階上」の人々に関する断片的な情報と、使用人達によるゴシップから、貴族階級の人間の表と裏の顔を知る事になります。
逆に、「階下」の人間については、「階上」に行けば従順な顔を見せるが、「階下」に戻れば本性を露呈してしまうという事を知ってしまいます。

このようにして、登場人物の背景や人生、更には退廃ぶりが明らかにされていくのです。

この二つの世界を巧みに交錯させ、シニカルな群像劇へと収斂させていく、アルトマン監督の手腕には、本当にいつも新鮮な驚きとともに、映画の醍醐味を感じさせてくれます。

そもそも、この映画は最終的に誰が犯人なのかという"フーダニット"式にはなっておらず、明かされた犯人も元の生活へと帰っていきます。
そうかと言って、今更、アルトマン監督が、イギリスの階級社会の批判をしたかっただけとも思えません。

という事は、やはり、あくまでイギリスの階級社会は、アルトマン監督のシニカルな視線のやり玉にあげられただけであり、そこで起こった殺人事件についても、単なるモチーフに過ぎなかったのかも知れません。

それにしても、この映画全体を包み込む深い倦怠感、アンニュイなけだるさは何を意味しているのだろうか?
招待された映画俳優アイボア・ノヴェラが、ピアノを弾きながら甘いラブソングを歌うと、いつしか使用人達が集まって来て、聞き惚れる場面が妙に忘れ難い印象を残します。
その刹那、殺人事件が起こるのです。

この映画で描かれた時代は、貴族という階級そのものが終焉を迎えた時代でもあり、使用人達によるゴシップに翻弄され、結局、使用人なしでは何一つ出来ない貴族階級の人々の哀しき末路は、華やかな宴を終え、帰ってゆく面々の生気のない姿に暗示されているように思います。

そこには何とも言えない寂寥感が漂っていて、これはアメリカを舞台にした、従来のアルトマン監督の映画にはなかった世界感のような気がします。

イギリスを代表する名優マギー・スミス、ヘレン・ミレン、クリスティン・スコット・トーマス、アラン・ベイツ等の錚々たるイギリスの舞台出身の演技派の役者を揃えた事も、このような雰囲気を醸し出す上で大きな効果を発揮していたと思います。

評者

dreamer

更新日時

2021年08月12日 14時54分

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参考になる 2021-08-14
hacker2
2021年12月06日 18時32
2021年12月06日 18時32
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