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大統領の陰謀/dreamerのコメント

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大統領の陰謀へのコメント

採点

rating5

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+1

コメント

ウォーターゲート事件の真相を追求する、二人の政治記者を描いた、映画史に残る政治サスペンス映画の傑作「大統領の陰謀」

ネタバレ

このレビューは物語の核心部分が明かされています。

レビュー

映画「大統領の陰謀」は、現役のニクソン大統領を1974年9月9日の辞任にまで追い込んだ、ウォーターゲート事件をたった二人で摘発した、ワシントン・ポスト紙のうだつのあがらない、若い無名の記者の活躍を忠実に再現した、ドラマティックでスリリングなドキュメントタッチの映画史に残る傑作です。

1970年代の前半において、「追憶」、「華麗なるギャツビー」で世紀の二枚目俳優として甘い魅力を見せていたロバート・レッドフォードが、この映画のプロデュースに情熱を傾け、映画化に執念を燃やしました。

彼は、映画化に執念を燃やした理由として、「この事件が報道されだした頃の一般の新聞記者が、この事件を政治の世界にはざらにあるビジネスだと考えており、真相は決して明らかにならないだろうと確信していた事が、どうにも我慢ならなかった。----どうして彼ら二人は、他の誰もやっていない事をやったのか? なぜ華々しい名を持つ有名な政治記者は、それをやらなかったのだろうか? どうしてこの二人の無名の記者は、国の権力者を失脚させるような事をやれたのか? それは恐らく世界中の他のどの国でも出来ない事であった。アメリカほど開放的な社会を誇れる国はない。私はそれを映画にしてみたかったのだ」とその製作意図を語っており、自分の独立プロダクションにより、この映画化を実現しました。

事件の発端は、1972年6月17日の未明に、首都ワシントンのウォーターゲート・ビルにある、民主党全国委員会本部に5人の男が侵入し、パトロール中の警備員に発見されます。

単なる不法侵入であるかのように見えたこの事件に、不審の念を感じたのが、ワシントン・ポスト紙に入社して9カ月になったばかりの新米記者のボブ・ウッドワード(ロバート・レッドフォード)でした。

その日の午後の保釈裁判で、既に手回しよく政府筋らしい顧問弁護士が付けられていた事と、侵入者の一人が、CIAのかつての職員である事が判った事から、彼は、この事件の背後には何か裏があるのではないかと記者としての直観で感じました。

ボブ・ウッドワード記者に協力するのは、入社6年目で記者としてまさに脂の乗り切ったカール・バーンスタイン記者(ダスティン・ホフマン)で、実際に新聞記者であったダスティン・ホフマンの兄が、彼に映画への参加を強力に勧めたという話も残っています。

ワシントン・ポストの編集会議で、政治部長はベテランの政治記者に担当させたいと主張しますが、ベン・ブラッドリー編集主幹(ジェィソン・ロバーズ)は、政治家にべったりと密着した政治記者では却ってウヤムヤになってしまう事を懸念し、政治には全くの素人同然の、この一見冴えない二人の記者に担当させる事にしました。

この二人が所属する首都部は、ポスト紙の中でも陽の当たらない部署で、そのため、この二人は他の部署が軽視する不法侵入事件の取材に意欲的に挑んでいきましたが、それは自分達の社内での立場を変えられるチャンスだと考えたからだと思います。

二人は、新聞記者の基本である、"電話と足で実に丹念に粘り強く、事件の関係者への聞き込みと資料の裏付けを取る"べく奔走します。

映画は、ボブ・ウッドワード記者が疑念を抱いた事件にカール・バーンスタイン記者の協力のもと、事件に食い付いていかないと首にもなりかねないところから始まって、次第に事件の核心に近づき、鉱脈を探り当てていく地道な行動を丹念に描いていきます。

その彼らの取材の一つ一つをローゼンフェルド首都圏部長(ジャック・ウォーデン)とサイモンズ編集局長(マーティン・バルサム)、ブラッドリー編集主幹とが意地悪なくらい幾重にもチェックしていきます。

その中でブラッドリー編集主幹は、かなり強引な取材を続ける彼らを全面的に支援し、いろんな各方面からの圧力から守り、叱咤激励をして事件の解明へと導いていきます。

このブラッドリー編集主幹を演じるジェーソン・ロバーズの圧倒的な演技が本当に素晴らしく、この演技で1976年度の各映画賞の助演男優賞を総なめにしたのもわかる気がします。

この取材と編集の綿密な進め方は、実際の新聞社の編集局にも見える大きなセットと併せて、アメリカでの新聞製作の内情を知る上でも非常に興味深く、事件の対象が司法長官を含む政府の首脳であり、もし間違った場合の事を考えますと、まさに社運を賭けた取材であったと言えます。

映画が描く、合理的で地に足のついた地道な真相追及の過程は、正統的なアメリカン・ジャーナリズムの本領を示していて、アメリカという国のある意味での素晴らしさを痛感させてくれます。

それと共にこの映画は、政治がテーマですが、ミステリーの謎解きをするようなワクワクするような面白さに満ちていて、このように硬派の素材をエンターテインメントとして見せてくれるアメリカ映画の素晴らしさを感じるのと共に、昨今の日本映画の脆弱さを感じてなりません。

そして、映画の中で事件の解明の重要な鍵を握る情報提供者の「ディープスロート」ですが、原作では行政府の人間としか表現されず、長年、謎の人物となっていましたが、2005年に当時のFBI副長官であったマーク・フェルトが自ら名乗り出て、彼である事が明らかになりましたが、映画では謎の人物として、顔もはっきりとは見せず、不気味な人間として描いています。

この「ディープスロート」は、二人の記者に対して、具体的な情報は漏らさず、調査の方向性のみを示唆し、事件解明の道筋を与えていきます。

マーク・フェルトが「ディープスロート」であったという正体が明かされた後、この世紀の政治スキャンダルであったウォーターゲート事件は、ニクソン大統領を辞任に追い込むためのFBIの一種の政治クーデターだったのではないかという見方が生まれました。

ではなぜ、ニクソン大統領を失脚させねばならなかったのかというと、この「ディープスロート」、つまりマーク・フェルトの情報提供の理由は、正式には明かされませんでしたが、"ニクソン大統領が1972年のジョン・エドガー・フーバーFBI長官の死後、彼を次期長官へ指名しなかった"こと等への反発があったのではないかというのが定説になっています。

映画のラストシーンで、得意満面のニクソン大統領を映すTVの場面と、タイプライターを黙々と打ち続ける二人の記者を同じ画面に入れて、ボブ・ウッドワードとカール・バーンスタイン共著の原作の内容を途中で切り上げながら、ニクソン政権の崩壊のプロセスをタイプライターで綴る淡々とした結末は、アラン・J・パクラ監督の憎らしいほどの演出のうまさが光っています。

尚、この映画の原題である"All the President's Men"というのは、この事件の犯人の正体を示す意味の他に、有名なマザー・グースの詩の中の"オール・ザ・キングズ・メン"をもじった「王様の家来達が右往左往したが、結局それも無駄骨だった」という寓意も含まれているのです。

この映画は「パララックス・ビュー」、「ペリカン文書」等の政治サスペンス映画を得意とするアラン・J・パクラ監督、「明日に向って撃て!」、「マラソンマン」等の名シナリオ・ライターのウィリアム・ゴールドマンが脚色、「ゴッドファーザー」、「アニー・ホール」等のゴードン・ウィリスが撮影、「さらば愛しき女よ」、「ノーマ・レイ」のデヴィッド・シャイアが音楽を担当と、映画ファンであれば泣いて喜ぶほどの一流のスタッフが集結しています。

そして、この映画は公開されるや各方面から絶賛され、1976年度のアカデミー賞の最優秀助演男優賞(ジェーソン・ロバーズ)、最優秀脚色賞、最優秀美術監督・装置賞、最優秀音響賞、ニューヨーク映画批評家協会の最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀助演男優賞、全米批評家協会の最優秀作品賞、最優秀助演男優賞をそれぞれ受賞しています。

評者

dreamer

更新日時

2021年03月06日 15時04分

コメントの推薦

参考になる 2021-03-07
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