アン・リー監督が初めて手掛けたアクション大作で、愛と闘いのドラマに、娯楽性をふんだんに盛り込んだスケールの大きな作品「グリーン・デスティニー」
このレビューは物語の核心部分が明かされています。
巨匠キン・フー監督を敬愛し、かねてから"武侠映画"を撮りたいと思っていたという台湾出身のアン・リー監督が、初めて手掛けたアクション大作で、愛と闘いのドラマに、娯楽性をふんだんに盛り込んだスケールの大きな作品だ。
原題の「臥虎蔵龍」は、人物や場所が「見かけ通りではない」ということを示す中国の格言で、主人公の武術家リー・ムーバイ(チョウ・ユンファ)の内面には愛の悩み、可憐な貴族の娘イェン(チャン・ツィイー)の中には武術の技が秘められているなど、登場人物の多面性を示しているのだ。
グリーン・デスティニーとは、無敵の剣客ムーバイが所有する四百年前に作られた伝説の秘剣「碧名剣」。
ムーバイが、密かに魅かれ合う女剣客シューリン(ミシェル・ヨー)に、剣を北京の知り合いへ預けるよう頼むところから、物語は始まる。
預けた剣が何者かに盗まれ、シューリンは、隣家の貴族の家を怪しむが、そこの嫁入り前の娘イェンと出会い、義姉妹の関係となる。
更に、ムーバイの師を殺した女武術家「碧眼狐」、イェンに愛を誓った盗賊団の首領ローらが登場し、相互の愛憎が絡み、筋は目まぐるしく複雑に展開していく。
アクション監督は、「マトリックス」で腕を振るったユエン・ウーピン。
噴き出してしまう大袈裟な演出もあるが、しなる竹の上でムーバイとイェンが戦うシーンは、実に思い切った発想で、東洋的な美を生かし、新しい映像を創ろうとするセンスを感じさせて素晴らしい。
この作品がデビュー2作目となるチャン・ツィイーが、とてつもなく強いヒロインに扮し、チョウ・ユンファやミシェル・ヨーというアジアを代表する国際派スターを食う、鮮烈な存在感を発揮していて、目を見張らせる。
様々な武器や拳法を駆使し、空までも飛ぶことが出来る男女の愛と闘いの日々が、アン・リー監督らしい細やかな人物描写で、エモーショナルに展開していて、実に見事だ。
尚、この作品は、2000年の第73回アカデミー賞の最優秀外国語映画賞・撮影賞・美術監督/装置賞、オリジナル作曲賞、ゴールデン・グローブ賞の最優秀監督賞・外国語映画賞、英国アカデミー賞の最優秀監督賞、LA映画批評家協会賞の最優秀作品賞を受賞しています。
2021年06月08日 11時18分
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