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誓いの休暇/hackerのコメント

rating44.0000

誓いの休暇へのコメント

採点

rating3

推薦数

+1

コメント

忘れられないラスト・シーンを持つ映画の一本。

ネタバレ

このレビューは物語の核心部分が明かされています。

レビュー

物語を簡単に説明すると、第2次大戦中の独ソ戦線における戦功(ドイツ戦車から逃げ回っているうちに、たまたま見つけた対戦車砲で、相手の戦車を破壊した)によって、勲章と特別休暇を与えられた少年兵が、故郷の母に会うための旅の途中で、様々な出来事と人に出会い、母に会えた時には、ほとんど時間がなくて、挨拶を交わした程度で、再び戦線に飛んでもどって行き、それきり二度と母の元には戻らなかった、というものです。

この最後の、ロシアの平原で展開される、出会いと別れが、なんとも印象的な佳作なのですが、初見からずっと引っかかっていたのは、そんな風に厳密に戦線に戻らなければならなかったのか、という素朴な疑問でした。最近になって、イギリス人のアントニー・ビーヴァーが、膨大な資料と証言を元に書き上げた、『スターリングラード』と『ベルリン陥落1945』を続けて読んでみて、その理由の一部を垣間見たような気がします。

そもそも、独ソ戦というのは、戦闘の大半が人間の居住している地域で行われたということもありますし、両国がヒトラーとスターリンという、人命よりも「正義」を優先する独裁者の支配下にあった、ということもあるのでしょうが、民間人も含めると数千万人(おそらく正確な数字は誰も分かりません)という信じられないような犠牲者を出した戦いでした。

大きな理由の一つとしては、ナチスはユダヤ人同様、共産主義者であるソ連人の民族抹殺を公然と掲げたため、ドイツ軍が、一般人も含めてソ連の人間に対して容赦しなかったことが挙げられます。ベルリンにソ連軍が迫る中の、一ドイツ兵の次の証言は、そのほんの一例です。

「もし相手(ソ連)が勝ったなら、そしておれたち(ドイツ)が占領地でやったことのほんの一部でも敵がここでやったら、ドイツ人なんか数週間で一人も残らなくなるんだぞ」(『ベルリン陥落1945』白水社刊)

これに対し、ドイツとの戦争準備を全くしていなかったソ連(独ソ不可侵条約を信じすぎた、スターリンの思い込みのせいと、作者のビーヴァーは判断しています)は、大量に人間(文字通り、老若男女)を投入することと、ロシアの広大な大地と厳冬による時間かせぎによって、スターリングラードから反撃に転じる訳ですが、一方でドイツ軍に協力して、兵士として参加していたソ連人も少なくありませんでした。彼らはヒーヴィと呼ばれ、そうなった理由は色々でしょうが、スターリングラードで包囲されたドイツ軍約27万人のううち、約2万人がヒーヴィだった、と言われています。実は、それ故でしょうが、ソ連軍内の兵士への処罰は大変厳しかったようです。

ビーヴァの書物からも、ソ連軍において、戦線離脱とみなされた兵士の処刑は珍しくなかったことが分かります。ですので、この映画の主人公が一瞬だけでも母と会ったことですら、じつは大変なリスクであったのでしょう。裏目読みをすると、往路で色々な目に会った主人公が、何事もなく復路をたどったとは考えにくく、もしかすると、戦線離脱の疑いをかけられたのかもしれない、とも思えます。まぁ、これは考えすぎでしょうが...。

そういう時代背景は別としても、大祖国戦争(ソ連側の呼称)における兵士たちが、英雄でも何でもない、一人の人間である、という視点から描かれた、この作品への好感は変わるものではありません。まだ戦争の記憶の生々しい1959年という製作年度からも、実体験はここで描かれたものよりはるかに過酷だったはずですが、教条的でない感情を持った人間を描こう、という作る側の意気込みが感じられ、とても印象的でした。

平原に一人たたずむ母の姿は、ソ連誕生の頃に作られた、プドフキン監督の『母』(これはこれで、もちろん傑作ですが)で描かれた母の姿とは、いかに違っていることでしょう。ソ連の雪どけ時代を代表する映画でした。

評者

hacker

更新日時

2010年02月07日 15時59分

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