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死刑台のエレベーター/dreamerのコメント

rating44.3333

死刑台のエレベーターへのコメント

採点

rating5

推薦数

+1

コメント

都会を映すノワールなモノクロ映像と即興演奏によるジャズの音楽が、現代人の空虚な心理を斬新な演出で鋭く抉ったルイ・マル監督の秀作「死刑台のエレベーター」

ネタバレ

このレビューは物語の核心部分が明かされています。

レビュー

この映画「死刑台のエレベーター」は、「ジュ・テーム、ジュリアン」と電話口でけだるく囁く女の顔のアップで、幕を開けます。

マイルス・デイヴィスのトランペットの旋律が、けだるく響き、この疲れた顔の女の恋が、切なくもの哀しい運命にある事を予感させます。

監督は、フランスの新しい波と言われるヌーヴェル・ヴァーグの旗手的存在だった、ルイ・マル監督の若干25歳の時の衝撃のデビュー作で、音楽は、モダンジャズの帝王マイルス・デイヴィス、撮影は「太陽がいっぱい」の名手アンリ・ドカエ、主演は、当時29歳のフランスの名女優ジャンヌ・モローと「太陽がいっぱい」「鬼火」のフランスを代表する演技派俳優のモーリス・ロネ。

監督、撮影、音楽、役者、ストーリーと、どれをとっても最高に素晴らしく、それらが互いに絡み合い、見事に化学反応を起こし、優れた映像世界を作っているのです。

土地開発会社で働くジュリアン(モーリス・ロネ)は、社長夫人フロランス(ジャンヌ・モロー)と密会を重ね、遂に、邪魔者になった社長を殺す完全犯罪を企て、二人は実行しますが、犯行直後、帰り際に乗ったエレベーターが、電源解除のため停止してしまい、彼はその中に閉じ込められてしまいます------。

フロランスは、ジュリアンと連絡がとれないため、ジュリアンを探して、夜のパリの街を歩くシーンは、まさに"映画そのもの"で、夜の中を、ジャズのけだるい音楽の中を、街の灯の中を、ハイヒールを履いた身なりのいい女が必死にさまよい歩く------。

そして、小雨が降り始め、雷が鳴り響き、女の顔には目の下に深いくまが刻まれ、焦りと焦燥の色がにじみ出てきて------。

名手アンリ・ドカエのカメラワークとマイルス・デイヴィスの即興演奏によるジャズのけだるい響きが、フロランスの心理を効果的に物語っていて、実に見事です。

およそ映画でしか表現できない、"映像が伝える感情"が、ここにあるのです。
パリの街中を行き交う人々や車、ネオンサイン、こういう"夜の街の表情"が、全て恋人を必死で探し歩く女の心理を的確に表現しているのだと思います。

このような優れた映像テクニックを持つルイ・マイ監督の映画は、極力、無駄なセリフをなくし、我々観る者の創造力をかき立ててくれます。

そして、車の窓ガラスに映った自分の顔を見て、「ひどい顔、悪魔のようだわ」とつぶやく女------、ジャンヌ・モローは本物の女優だと痛切に感じます。

この映画の全編を覆う、アンリ・ドカエの撮影によるモノクロの映像が、美しくもスリルに満ちた光と影を投げかけ、映像的な痺れるような陶酔感を味合わせてくれます。

それにしても、このモノクロの映像による、夜のパリの美しさは、比較するものがない程の美しさに溢れています。

喧噪の中に孤独が潜み、傍観者にはただ美しく見える街、それがパリの街なのです。

真っ暗なエレベーターの中で、ジュリアンの憔悴しきった横顔を照らし出すライターの光。
見回りに来た警備員が持っている蛍光灯の光、そしてラストの------。

この映画「死刑台のエレベーター」は、ヌーヴェル・ヴァーグの存在を広く世界に知らしめた記念すべき作品で、ルイ・デュリック賞を受賞した、映画史に長く残る名作なのです。

評者

dreamer

更新日時

2021年05月16日 22時26分

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