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溝口作品では珍しく「良い男」が活躍する映画。長谷川一夫さんの演技は見応えがあります。
ちょっとした釦の掛け違えから物事があらぬ方向に進み、出奔する事になってしまった男と女。
お家様などと呼ばれ、敬われる立場だが、実際は金銭面での援助目的で嫁がされた女。その実家とケチな夫の板挟みになり、さらに使用人に手を出す夫に嫌気がさし、死のうと思っていた女。
そんな女にたった一言で生きる希望を与えた男。そんな場面が全く作り物に見えません。登場人物に喋らせるならここまでしなければ、と思わせます。
ラストは普通に見れば悲劇ですが、その当事者の表情はそうは見えません。お家の恥と罵られるかも知れませんが、愛のない夫やその夫の金を当てにしている実家に果たしてそんな事を言う資格があるのでしょうか?
各場面の伏線の引き方も実に見事です。
溝口監督は長谷川一夫さんの起用に難色を示したとの事ですが、永田雅一社長の鶴の一声で出演が決定したと言われています。大映の映画には大抵「製作 永田雅一」と名前が入っていますが、決してお飾りではない事を示すエピソードだと思います。
2015年10月25日 12時59分
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2015-10-26 hacker |