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灰とダイヤモンド/hackerのコメント

rating44.4000

灰とダイヤモンドへのコメント

採点

rating5

推薦数

+1

コメント

大義のために戦ってきた青年が、いつの間にか、矮小なテロリストとなってしまう、いつの時代にも共通する悲劇。やはり傑作だと思います。

レビュー

この作品は時代背景を一応理解しておいた方が良いでしょう。

第2次大戦末期、ソ連軍がポーランドへ進行する最中、ワルシャワにて、レジスタンス活動をつづけてきた共和国派が、ドイツ軍に対して蜂起します。それは、ソ連軍の圧力を当然期待していたものですが、ポーランドの戦後体制を共産党主導で行ないたいという思惑のあったソ連軍は、ワルシャワの手前で進行を止め、蜂起側はワルシャワ全市を破壊に巻き込む戦闘の末、ドイツ軍に降伏しました。その時、市内の地下水道を蜂起軍が逃げ場所にしていた様子は、ワイダ監督の前作『地下水道』で描かれています。本作の主人公マチェック(ズブグニエフ・チブルスキー)がいつもサングラスをかけているのは、その時の地下水道生活の影響だと説明されています。

共和国派に、ソ連軍に見殺しにされた、という思いは強かったことでしょうし、自分たちは共産主義国家を作るために戦ったのではない、という気持ちもあったことでしょう。主人公マチェックは、そんな青年闘士です。

ドイツが降伏した日を舞台にする、この作品は、ドイツという外部からの侵略者に対して戦ったきた青年が、内戦状態の国内で、同国人の共産党幹部を暗殺する姿と心の葛藤を描いています。つまり、大儀のために戦ってきた青年が、いつの間にか、矮小なテロリストとなってしまう、歴史の中での悲劇を扱っているのです。そして、これはいつの時代にも共通する、青年の悲劇なのです。

今回再見して、印象的だったのが、主人公も暗殺される共産党幹部も、同志と酒を飲みながら、自分たちの戦いを振り返り、「昔は良かった」と語っている点です。つまり、外敵がはっきりしていて、自分たちの「正義」を感じながら戦っていた時期と比べると、今の殺し合いは何の意味があるのかという、心の揺らぎを感じさせる場面なのです。しかも、両名とも、今さら大義を捨てるわけにはいかない、という点でも共通しているのです。

本作には、印象的なシーンが多々あります。

最初に人違いで殺される男の背中に撃ち込まれた銃弾で燃え上がる服、マチェックがウォッカのグラスに火を灯しながら、相棒のアンジェイ(アダム・パウリコフスキー)と死んだ仲間を思い出す場面、一夜の仲ながら強く惹かれあうクリスティーナ(エヴァ・クシジェフスカ、きれい!)とマチェックの二人が、夜の散歩で見かける、崩れた教会と逆さづりの十字架のキリスト像と雨の中をさまよう白馬、暗殺した共産党幹部の体を抱きかかえるマチェックの背後で上がる終戦を祝う花火、腹を撃たれたマチェックの血で染まる白いシーツ、夜明けの光の中で終戦祝賀会の参加者たちが踊るポロネーズ、ラストの、あまりにも有名な、広大なゴミ捨て場で息絶えるマチェック...

これらとは別に、今回特に印象的だったのは、ラスト近く、年老いたホテルのポーターが、朝の光の中、新生ポーランドの国旗を誇らしげに玄関に掲げる場面です。第2次大戦は終わり、ナチスからは解放されました。しかし、内戦は続き、そしてその後に誕生した共産主義国家がどのような歴史をたどったのかを知っている、現在の私には、初見時より重くのしかかるものがありました。

第2次対戦中、国土が戦場と化したポーランドは、ユダヤ人の虐殺の影響もありますが、人口の三分の一が失われたということも、忘れてはならないでしょう。

やはり傑作です。

評者

hacker

更新日時

2012年11月29日 10時52分

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