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東京物語/みかん星人のコメント

rating44.7143

東京物語へのコメント

採点

rating5

推薦数

+1

コメント

「あたりまえ」というのは、「とうぜん」という言葉の借字「当前」から生まれた言葉だと聞きましたが、この映画は、まさに、
「当たり前に、疑うことなく、当然のように過ぎてゆく平穏な日々」
が、どれほど大切で愛おしいものなのかを感じさせる。

ネタバレ

このレビューは物語の核心部分が明かされています。

レビュー

最後の台詞に、その平穏な日々への痛惜の念を上品に織り込む美しさ、せつなさ。その一方、
「当たり前に過ぎてゆく日々の中で『何か』を待ちわびる心」
をも冷徹に見抜き、対峙させる「こわさ」がたまらない。
「日本映画を代表する」に留まらない、普遍的な作品であり、多くの人々を魅了して止まない傑作だと思う。

などと、こんな「ありきたりな事」を書いて『東京物語』の「なに」を語れるのだろう?
この映画のように(この映画に限らないけれど)、多くの人に感銘を残し、多くの作品に影響を残した映画については、語るのをためらってしまう。
だから、とても私的な事を語ってみよう(笑)

東京で祖父母と孫二人が挨拶する場面での妙にギクシャクした感じは、私にも覚えがある。
日常に割り込んできた、けれどとても大切に扱われる二人の老人を前にした緊張感。息子である我が親父殿は微妙に主導権を握りたがり、嫁である我が母君はめったに見せない慇懃さで対応する。父母の手前、どんな対応をすれば良いのかを乏しい経験の中から模索する孫と、そんな孫の機嫌を損ねずどんな調子で接したら好いのかと戸惑う祖父母。そんな血と愛情で繋がっているハズの者達の間に存在したあの不思議な雰囲気を思い返していた。その後は、だから、映画の中の出来事と、自分の経験を何度も重ねながら観ていて、「泣いて袖引く形見分け」の辺りも、複雑な思いだった。

ま、ともかく、その「祖父母とと孫」の関係である。昭和28年頃に、既に祖父母と孫との関係がこうであること、つまり、一緒に住んでおらず、めったに会えないという状況がキチンと描かれている。
もちろん、それ以前から「祖父母と孫の関係」が疎遠になる状況はあったと思うし、その事を描いている映画はあっただろう。けれど、この『東京物語』が鋭いのは、この関係の崩壊を特に強調して描かずに、
「今後この国に、もしくは世界中のいたる所で、都市への集中が起こし得ることの一つ」
として、淡々と映画の中に織り込んでいることだろう。
そして、その予測のほとんどが現実化した今日の視点からみると、どこにもいびつなところが無く完成しているという事に驚かされる。

果たして、いま現在制作されている映画の中に、こうして「現在静かに進行している構造の変化」を自然に描き、明日を予測した映画があるだろうか?例えば、携帯電話やインターネットの普及を当然なできごととして描きつつも、それが人間関係の未来にどのような影響をもたらすのか?を予測した映画、、、あったかなぁ?
『東京物語』は、
「観おわった後、親孝行したくなる映画にしたい」
という思いで制作された映画だとのこと。
それを描かなければならないと決意した洞察も含めて、スリリングなまでに鋭い、冷静で怖い映画であると思う。

更新日時

2008年06月08日 08時59分

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