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東京物語/ドンペリのコメント

rating44.7143

東京物語へのコメント

採点

rating5

推薦数

+3

コメント

家族、親と子、兄弟、これら普遍的なテーマを全て盛り込んだ素晴しい映画だった。
この年になって、さらにしみじみ感動。なんだか泣けてきた。

ネタバレ

このレビューは物語の核心部分が明かされています。

レビュー

始めに、笠智衆の巧さは今更言うまでもないけれど
考えたらこの頃から(当時50歳前?)彼の老け役は凄い。驚くばかりだ。


典型的な日本家屋に本来の家族・親子という形態が詰まっている。そんな映画だ。
昔懐かしく「さも有りなん」で作られた『ALWAYS 三丁目の夕日』でさえ感慨深く観られたのですから、
こちらは当時のホンモノなわけですから、敵いませんです。

リアルさが細部に渡るまでさり気なく盛り込んである素晴しい脚本と、素晴しい演出だ。
茶の間でテーブルを囲んで座ると、まさにこうなるはずというカメラの据え方も好きだ。
(一般的な 皆の顔が対等に映るように俳優が配置される不自然さが私は好きではないのだ。)

また、このオールスターキャストの凄さにも驚いた。
次々に登場する昔の有名人をほとんど知っている私は何なんだ?彼らの晩年の姿を何かしらで見ていたので
それぞれの若い頃を懐かしく堪能する私であった。
(十朱幸代のお父上など 若い人は知っているかしら・・・などと思いながら。ヘッヘッ!)


物語は
何十年ぶりに、東京で開業医をしている息子の家に訪れることになった老夫婦が
旅支度をしているところから始まる。尾道に住んでいるのだ。
この老夫婦、笠智衆と東山知恵子の何気ない会話の、そのリアルさにまず胸がキュンとした。
旅の荷造りをしながら 持って行くはずの空気枕が見当たらないという妻。
「またお前は・・良く捜してみろ」と夫がいう。
それでも妻の方には見当たらない。
すると夫の方の荷物にあり、「あ、ここに入ってた」と夫が言う。
妻は「あ、そうですか、ありましたか」と何事もなかったように言う。
この長年連れ添った老夫婦の会話に まず痺れてしまった。
この出だしが本作のすべてを語っているようにも思える。


いよいよ東京の長男(山村聡)の家に到着し、妹の(長女・杉村春子)も一緒に両親を迎える。
ここでその日の夕飯について 長男の嫁(三宅邦子)と杉村春子との会話に山村聡も入る。
この‘何気なさ過ぎる’やりとりは 本作から50年後の今日でも当たり前になされる実にリアルな会話であり、痺れた。大人の世界の微妙な会話だ。
母親の危篤の電報を受けた時の長男と長女の会話も、そのリアルさも抜群で、杉村春子の巧さったらない、ほんとに巧い。
小津安二郎という人は なんてデリケートで観察力に優れた男だったのだろうと、その感性に感動。
また「至極日常であるだけ」のものを 映画だからと力まず、膨らませず「極力奇をてらわず描くこと」に
集中したのであろうと認識できるのである。
全編これで推し進められるわけで 年を経るほどしみじみする映画に違いない。


両親が尾道から何十年ぶりに上京し、長男・長女の家に滞在するのだが、現実には皆、日々の仕事(生活)に追われ、両親の相手もろくに出来ず、持て余す。
両親もなんとなく居心地が悪くなり、小津がこの両親に吐かせる言葉は「そろそろ帰りましょうかね〜」という優しい言葉であるのだが、年老いた両親が語るだけに 切なくて涙が溢れた。
実の息子と娘は仕事も休めず 最初で最後かも知れない思い切った上京をした両親の相手をしてあげられず
・・・「あげられず」ではなく「あげず」だと思うのだが・・・結局、後家さんになってしまった義理の妹に東京見物を押し付けるのだ。 この嫁(原節子)が実に良く出来た嫁であり、原節子はオイシイトコ取りだ(笑)。


親子同居がなくなり 地方から独立した子供たちは東京で所帯を持ち、自分達の生活のことで手一杯になる。
年老いた親は 隅に追いやられていく・・。彼らが一庶民の生活レベルであるからこそ それはより普遍的だ。

結局東京滞在中は、実の息子・娘より、亡き次男の嫁が一番自分達によくしてくれたと両親は実感するが、「欲張ってはキリがない。私達はこれで結構幸せな方だ・・・」としみじみ年老いた笠智衆が言う。
「血の繋がった実の子供達なんて 独立して所帯を持ったらこんなものだ」という一抹の寂しさも感じ取れ、
私は親孝行をしなくては、などとかなり主観的に観られたのも事実だ。

追い討ちをかけるようにラスト・・・・長男・長女は尾道での母親の葬儀が済んだらサッサと帰ってしまう。
尾道で両親と暮している未婚の末妹の香川京子が「お姉さん達、酷すぎる」という言葉で〆る。

製作年を考えると、変り行く日本の家族形態のあり方を憂いた作品なのではないだろうかと思えてくる。

そして50余年経った今日、あらゆる場面がまさにこの通りなのだもの、古くないのだ。 凄い映画だわ。






*『早稲田松竹』の近くのバーに行った時、
私が映画をよく観るのを知っているその店のマスターが
「早稲田松竹で小津安二郎をやるよ」と教えてくれた。
調べたら『麦秋』と二本立てだったので 時間を作って観に行った。

評者

ドンペリ

更新日時

2007年02月11日 02時20分

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